第7話

「ご、めんね。私、子供でっ。い、インドでも、少しは私の事を思い出した?」


泣きながら春菜は本当に子供みたいに馬鹿なことを聞いてきた。それが可愛くて仕方ねえ。


「ああ。刺されてからずっとお前に連絡取ることしか考えて無かった。」


「匠っ。ごめんなさい。」


俺はぐすぐすと本格的に泣き出した春菜の背中を宥める様に撫でた。


「パスワードが特殊で取り直さなきゃ連絡出来ねえと知った時はマジで仕事を放り出して日本に帰ろうかと思った。

そうすりゃあ良かったな。」


「っ、それはダメ!!そんな事したら松江の信用が無くなっちゃう!ケイさんだって困るよ。」


あわてて顔を振る春菜は確かに子供じみた所はあるが、それでも同世代と比べりゃ格段に大人だ。


「わ、私ね、連絡出来なくなって最初は凄く心配したの。でもお兄ちゃんや凍夜は仕事が忙しいだけだって言うし。」


「悪い。心配をかけたくなくて、2人にはそう言うように頼んだんだ。」


「送信文で拗ねても、怒っても返事は来ないし。」


「ああ。悪かった。」


「やっと届いたメールで怪我の事を聞きたいのに隠されたし。」


「ああ。あん時の返信は忘れねえ。『お帰りなさい。お疲れ様でした。』

怒らせたと思って頭を抱えたよ。」


俺が笑うと


「だって、他に何を書けばいいのかわからなかったんだもん。」


くすんと鼻をすすった春菜は拗ねたように俺を睨んだ。


「意地張らずに事情を説明してもらえば良かったな。」


「それだって私を心配させたく無かったからでしょ。」


「…ああ。」


笑う俺は嘘つきだ。

悠里はともかく凍夜には絶対に俺らのプライベートに足を踏み入れさせたく無かったから。まったく、春菜より俺の方がまるっきりガキだ。

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