第1ー4話:異世界へ(4:回想―3)

 志朗は、会議室のホワイトボードに図を描きながら、新規倉庫の設置や既存拠点の効率化に関する議論を進めていた。

 物流ネットワークを再構築し、クライアントのニーズに応えるためには、先ほどの部下たちの発言からあるように様々な課題が残っていることは明らかだった。

「関東圏内の南部地域での配送効率を改善するためには、今の倉庫のキャパシティでは厳しい。新たな倉庫を建設するか、横浜周辺で別の拠点を設置する必要がある。」

 

 部下の一人が手を挙げて発言した。

 「もし横浜周辺に新たな拠点を設置するとしたら、どのくらいの規模が適切だとお考えでしょうか?」

 

 志朗はその質問に少し考え込んだ後、問い返した。

 「規模も重要だが、まずはどのエリアに需要が集中しているのか、そしてどれだけの輸送能力が必要かをデータで確認する必要がある。君たちの意見として、今の運送フローでボトルネックになっている場所はどこだと思う?」


 別の部下がすぐに答えた。「やはり、東名高速道路沿いの物流拠点が、ピーク時には渋滞が発生しやすいので遅延が出ています。特に、物流拠点に向かうトラックが集中することによって、高速道路の出入り口付近で慢性的な混雑が発生します。また、都市部へのアクセス道路が限られているため、交通量が増える時間帯には流れが滞りやすくなっています。さらに、物流拠点の荷降ろしや積み込みに時間がかかることで、トラックの回転率が低下し、渋滞を悪化させる原因となっています。ここを優先的に改善すべきだと思います。」


 さらにもう一人が発言を加えた。

 「それに加えて、横浜港からの輸入貨物の取扱量も増えているので、港湾近くに新しい倉庫を設置できれば効率化に大きく貢献するはずです。」


 志朗は彼らの意見に頷きながら、ホワイトボードにそれらのポイントを書き加えていった。

 そして、志朗は、いつものように定型的な議題進行で会議を進めていった。

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