第1ー3話:異世界へ(3:回想―2)
志朗が所属する部署は、新たな物流計画を策定し、クライアントに提案する役割を担っており、志朗自身もこれまで数多くのプロジェクトを成功させてきた。
特に、彼が担当するのは新規倉庫の建設や、既存倉庫の効率化プロジェクトであり、最新のテクノロジーを駆使して物流の流れを根本から変革しようと取り組んでいる。
「まず、この部分を確認してくれ。」
志朗はホワイトボードを指し、図表を見せながら話し始めた。
その図表には、現行の配送ネットワーク図や新規倉庫の候補地が示されており、赤い線で主要な輸送経路が強調されていた。
また、青いマーカーで示された候補地は、物流効率を向上させるための戦略的ポイントとして説明されていた。
図表を通して、現在の物流キャパシティの限界と、新拠点がどのように需要を補完するかが一目で理解できるようになっていた。
「ここが新規物流拠点の候補地です。今の配送ネットワークでは、今後の需要増加に対応しきれないので追加の倉庫建設は必要です。」
部下の一人が手を挙げ、質問した。
「うちは、国内外に相当大規模なネットワークを持っているんですよね? これ以上に拡張する必要があるんでしょうか?」
「そうだな。」
志朗は頷いて答えた。
「確かに、エンパイアは国内外に多くの拠点を持っているので、主要都市を結ぶ物流網があるし、海外にも多くの物流拠点を展開している。そして、倉庫管理から輸出入まで一括で管理してる。ただ、それでもクライアントのニーズは増加しているんだ。具体的には、昨年だけでもオンラインショッピングの需要が35%増加し、それに伴ってラストワンマイル配送の遅延が課題として浮上している。特に、首都圏近郊や地方主要都市では、配送需要の増加が著しく、既存の倉庫だけでは対応しきれない状況にある。この遅延はクライアント満足度を低下させるリスクがあり、競合他社との差別化のためにも迅速な対応が求められている。これに対応するために、特定の地域、例えば関西圏や九州北部で新たな拠点を設置し、物流の効率をさらに高める必要がある。
志朗は、ここで一呼吸を入れ、さらに続けた。
「さらに言うと、我々は長距離輸送からラストワンマイル配送まで、すべてを効率的に行っている。それが、エンパイアの物流システムの強みであり、我々の成功のカギだ。例えば、ある食品メーカーの案件では、長距離輸送を効率化し、配送時間を30%短縮することで製品の鮮度保持を実現した。こうした具体的な成果が、多様なニーズに応える方法を支えている。」
そう志朗は自信を持って説明した。
それを聞いた部下の一人が質問を投げかけた。
「長距離輸送からラストワンマイル配送まで、全てを効率的に行っているとはいえ、これ以上の拡張が必要なのでしょうか?」
志朗はホワイトボードを指しながら頷いた。
「そうだ、配送需要の増加が顕著であり、既存のネットワークでは限界がある。そのため、新たな拠点の設置が不可欠だ。」
その後、別の部下が確認するように言った。
「現在のプロジェクトで特に注目すべき課題は何でしょうか? 新規倉庫の設置や既存倉庫の効率化について、優先すべき点を教えてください。」
志朗は部下たちに視線を向けた。
「そうだな、まず、君たち自身が現状で最も大きな課題と感じている点を教えてほしい。それを踏まえて優先順位を議論しよう。」
一人の部下が手を挙げて答えた。
「私は、現在の在庫管理部門が直面している課題、例えば過剰在庫や欠品リスクが優先して解決されるべきですし、最初に対応すべきだと考えます。」
別の部下も意見を述べた。
「課題としては法規制や運用コストが挙げられるので、配送部門がまずこれらの問題をクリアする必要があります。」
さらにもう一人の部下が口を開いた。
「私は、倉庫内での自動搬送ロボットや自動倉庫などの導入時の作業員に対する研修や運用方法の標準化が課題になると考えます。」
志朗は一度目を閉じ、部下たちの意見を反芻した後、再びホワイトボードに向き直った。
「なるほど、それぞれに説得力がある意見だな。課題も明確にしてくれて助かった。それを踏まえて、具体的な優先順位と実行計画を策定していこう。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます