切っ掛け
2人がそういう事をする事になった切っ掛けは、ミオが転んで膝に怪我をした時の事だった。キョウは直ぐさま治療をしなければと村に連れて行こうとして、ミオは「この位、舐めてれば治るよ」と言った。気が動転していたキョウは位置的にミオが自分では舐めづらい位置だった事から、ならば自分がと座り込むミオの傷口に舌を這わせた。
するとキョウの味蕾にほんのり甘味が刺激される。自分が怪我をして舐めた時は鉄の味がしたのに、蜂蜜には敵わないけれど確かに甘い味がキョウの口に広がった。
「…甘い」
「え?本当?そういえばお爺ちゃんが花人の体液は、人間や他の種族には甘く感じるって言ってた」
「そうなのか?」
「うん、だから唾液も甘くてチューしたりすると、恋人が花人に夢中になりやすいって言ってた。自分じゃ味がしないから良く分かんないけど…試しに舐めてみる?」
そう言って舌を突き出すミオに、キョウは吃驚しながらもゆっくりと口を近付ける。そして舌を軽く舐めると直ぐに引っ込んだ。
「本当だ、甘かった」
「…」
ミオは冗談で言ったつもりだった。でも顔を近付けられて吃驚して舌を引っ込めるのを忘れ、本当にキョウに舌を舐められた事にミオは顔面を赤くする。そんなミオの顔色を見たキョウは漸く自分がした事を意識して、同じく顔を赤らめた。
「その…美味しかった、また舐めても良い?」
「えっと、私以外にも花人がいるから…他の綺麗な子に頼んでみたら…どうかな?」
「いや、ミオが良い。多分ミオだから凄く甘いんだと思う」
「…うん、キョウ君だったら良いよ」
それから2人は人気の無い所で、キスをするのが習慣になっていた。花人の唾液は甘く夢中になりやすい。深く舌を擦り合わせれば、更に唾液が溢れてキョウの口内に痺れる様な甘さが広がっていった。
ミオは知らない事だが、か弱い花人が生き残る術として、恋人や伴侶の体液を取り込むと、自身に夢中になる様に相手好みの甘露となる蜜を生成する体質を持っている。
数年口付けでキョウの唾液を接種してきたミオの体液は、キョウ好みの甘露を生成する様になっていた。
「ぷはっ…は、キョウ、くんっ苦し…はぷっ」
「む…ちゅ、ごめんミオ、もう少しだけ」
一頻り甘露を味わったキョウはミオを解放し、木の幹に座り込むとその膝の上にぐったりするミオを座らせる。
「最近激しいね…そんなに好き?」
「ああ、好きだ…最近特に美味しくなってきた」
「キスの味だけ?」
「んな訳ないだろ、ミオの事が好きだ」
「嬉しい」
「にしても…何で最近、村の女達は俺に食べ物くれる様になったんかな?」
「ねー、お母さんも私に良く料理とか教えたがる様になるの、何でだろうね?」
既に互いに思い合っている故に、他の者から好意を向けられるという発想自体が2人にはなかった。
「さっ今日は何して遊ぶ?ミオ」
「探検ごっこが良い!今日はあの山の天辺から周りの景色を見てみたい!」
「了解」
そう言うとキョウはミオを肩に乗せて、歩き始めた。周囲の人間が年頃になって遊ぶ相手が減った分、二人きりで当たり周辺を探検するのが日課になっていた。
×××
更にミオとキョウの関係が変わったのは、ある出来事が切っ掛けだった。
実は草花を生やすだけの能力しか無い花人は、半神や鬼人等の強い生命力を持つ者の体液を接種すると、それを養分に花人も強く成長するのだ。
数年口付けを交わし唾液を接種してきたミオの能力は、ある日突然開花した。豊作を願う祭りでミオが参加した際に、ミオの周辺で目の前の畑は急激に実り、背後の木々が急激に成長するという出来事が起こったのだ。
それだけではなく、キョウ家族が耕した畑の前で歌って踊ると異様なスピードで作物が実り、たった一晩で豊作になった。
その変化を知った村長はミオを呼び出して、キョウと交際している事を訪ねてきた。何故分かったのかと戸惑うミオに、村長は花人の体質について教え、体液を交わすほど親密な関係になってないと起こらない現象だからと教えた。
「それで?何処までいった?」
「えっえーっと、チューだけしかしてない」
「そうか、チューだけでそこまで成長したのか…何年前からそんな関係になっていたのやら。兎に角責任は取らんといけんのう」
「責任?」
「うむ、結婚じゃ!幸い互いに好き合ってる様じゃし、問題はないじゃろう」
「うぇっ!?結婚!」
「うむ、今夜の飲み会で村人達に話し合ってくるから、キョウ君と話し合って来なさい」
「う、わっわかった…キョウ君と話してくる」
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