村人達とそれから
ミオの祖父.イツが寝ているミオを連れ帰り、夕餉を食べ終えて大広場にて村人達と共に酒盛りをしている際に、イツはミオの身に起こった出来事を話した。その時に村人の数名が表情を曇らせる。
「あの鬼人の子供ですか?しかし鬼人と言ったら遠くの島で徒党を組んで、近場の村の金品財宝を強奪したり、殺戮をしたり好き勝手やっていた種族ですよね?」
「確か半神様方ご一行が、成敗して漸く終わったって話だかなぁ」
「他にもその力強さから徒党を組んでは、猛威を振るってるとも聞いてますが…大丈夫だったんですか?」
「んー鬼人とは言え礼儀正しそうじゃったし、性質を種族毎に纏めるのは早計というもんじゃろう。現に半神も逆に悪しき神になるという話も珍しいもんじゃないし、逆も然りじゃろう」
「確かに前に魔物が襲ってきた時に、鬼人の奥さん助けてくれましたもんねぇ」
「兎に角悪さをせんうちは様子見て、良好な関係を築けそうなら良き隣人として、迎え入れようじゃないか」
「うーんでも大丈夫ですかね?」
「でもこの前分けて貰った熊肉、久々のご馳走だったじゃないか」
村長が隣人として接しよと言う以上、反対する村人は居らず楽しい飲み会は続いた。
×××
それからミオとキョウの交流は続き、キョウは例の土地でミオの足が傷付かない様に土地を整地して、ミオは例の土地で歌って踊っては草花を生やしては、数年掛けて硬い大地を柔らかい大地へと変えていった。
キョウの父が今なら耕して野菜が作れるかもしれないと、キョウに知恵と種を授けて、キョウがその土地を耕しては種を蒔いて水を撒いて、ミオが歌って踊って夏には漸く不格好だけど撓わな作物が実って、初めて肉以外に野菜を村長家族にお裾分けにいった。
キョウの両親は畑を作れて一人前だと褒められて、ミオも両親に一人前の花人だと褒められた。その頃には大人達の間で鬼人という蟠りも無くなり、会ったら普通に挨拶を返す仲になっていった。
歳を重ねていってもミオとキョウは何時も一緒に居た。キョウは同年代の子と遊ぶには力が強すぎる上に、大人に交ざって狩りをするキョウに劣等感からか避けられており、ミオと同い年の子と力を使わない遊びに混ざる事が多かった。
小さい子と交ざって遊ぶ事を揶揄われても、キョウが一声吠えれば蜘蛛の子を散らす様に逃げていき、大人達は事情を知ってるし寧ろ小さい子の面倒を見て貰えて助かっているので、キョウの味方をするのは一目瞭然だった。
そんな彼等の関係が変わるのは、ミオ達が年頃になった頃だろうか。女の子達は力強く狩りの上手いキョウに花や手作りのお菓子を贈る様になり、恥じらいからか前のように遊ばなくなったのだ。
歌と踊りと遊びを1番に考えて鈍臭い所があるミオは、何故同年代の子がそんな事をするのか分からず、ただ母に言われるが侭に一緒にお菓子を作ってはキョウと一緒に食べながら、共に首を傾げていた。
「ミオ、今日も良いか?」
「!、うん」
2人は人気のない所へと移動して、周囲に人がいない事を確認してから、ゆっくりと唇を重ねた。
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