第6話 見つめられたら、戻れない
本当は生徒会室へ学園祭の書類を届けてから帰る予定だったのですが……正直、ルリ先輩が怖いのです。
廊下を歩いていると、遠目にルリ先輩の姿が見えます。隣には颯太先輩の姿がありました。いつもクールな生徒会長が、颯太先輩に微笑みかけているようにも見えます。
(ルリ先輩、やっぱりすごく美人……でも、わたしはあの人が怖い……)
なぜなら、わたしは知っているからです。ルリ先輩には裏の顔があって、もし踏み込んでしまえば、戻れなくなるかもしれない。
そんな直感があるからこそ、怖くて仕方ありません。
「わたしの書類は……明日にでも出せばいいかな……」
わたしは、そう自分に言い訳をしながら、ルリ先輩に見つからないように後ずさるように歩きます。
学園の女神だと称えられるあの人に、わたしごときが刃向かうのは無理でしょう。現に、ルリ先輩は今まで多くの人を魅了してきたはずです。
(颯太先輩、大丈夫かな……)
ちらりと視線を送ると、颯太先輩は、ルリ先輩の隣で少し緊張した顔をしています。その距離感は、傍から見ても妙に近いです……
近いというか……もはや恋人の距離感と思えるくらいで……
そこまで考えたとき、わたしは背筋に寒気が走りました。ルリ先輩が本気になれば、どんな手段を使うかなんてわからないからです。
だからこそわたしは……何もできないくらいに恐怖を覚えるのですが……
(颯太先輩……気をつけて……)
わたしは手に持った書類をぎゅっと抱きしめ、急ぎ足で校舎の外へ出ました。
誰にも言えない秘密を抱えている人ほど、近づくのは危険。
わたしはそう思いながら、こぼれ落ちそうな胸の不安を抑えこむのがやっとでした。
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