第4話 夕闇に潜む疑念
白峰ルリが最近、妙に落ち着かない様子を見せていると噂になっているからです。
休み時間に姿を消したり、誰もいない場所でスマホをいじっていたり……どうにも裏がありそうに思えます。
そんなことを考えながら、わたくしは生徒会室の扉を開けました。
すると、学園祭の資料を眺めていたのはルリだけです。あの完璧さを誇る生徒会長が、このところ余裕をなくしているように感じるのは、わたくしだけでしょうか。
「ルリ、最近何か──一人で抱え込んでいるのではありませんか?」
抱え込んでいるとオブラートに包んだものの、その実体はルリの個人的な何かのはず。
ルリは視線だけを動かし、わたくしを無表情に見つめてきます。
「……何のことかしら?」
ルリはそっけなく書類を重ねます。クラスメイトの話では、誰かと密会しているようだとか、生徒会の備品を個人的に使っているのではないか、などと囁かれていました。
わたくしは生徒会副会長として、そんな噂を放置するわけにはいきません。
「何のことかは、ルリが一番わかっているはずです。最近は誰かと会っているらしいですし、資料の一部が抜けている件も気になります。わたくしにも事情を教えてください」
「余計な詮索をするのね……学園祭に向けての仕事が片付いているなら、それで充分だと思うけれど」
ルリは微動だにせず、わたくしの追及を受け流すかのように返事をします。
けれど、その瞳にほんのわずかな揺らぎが見えた気がしました。だからこそ、わたくしは引き下がるつもりはありません。
「そういうわけにはいきません。わたくしは生徒会副会長なのですから」
「そう……なら勝手にどうぞ。あなたがそういうなら、好きに探ればいいわ」
ルリの声はあくまでも冷静でした。
わたくしは書類を机に置き直し、一歩下がります。
夕暮れの光に照らされた生徒会室はひどく静かでしたが、その静けさが余計にわたくしを苛立たせました。
「……後悔しても知りませんよ、ルリ」
「むしろ、後悔をさせてもらいたいものね」
わたくしは鼻を鳴らし、踵を返して生徒会室を出ます。
廊下を歩きながら、胸のうちには一層の執着が生まれるのを自覚していました。
ルリが落ち着きを失っている事実、それだけは確かです。
何かを隠している限り、わたくしは諦めません。
いつかあの生徒会長の仮面をはがして、全員の前で明らかにしてやります。
生徒会選挙のあの屈辱、わたくしは絶対に忘れませんわ……!
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