魔導士協会の成り立ち
古い時代。魔法が濫用され、犯罪が横行した。
たとえば、一般の魔法使いが自由に空を飛び、空中で衝突事故を起こす。悪知恵の働く一方が魔法で証拠を隠滅する。非常に難しいが、魔法で相手の記憶を攪乱するという方法もある。その現場に駆けつけた非魔法使いの警察官に、一体何が出来るというのだろうか。
魔法使用の統一規制と、それを安全に運営し、規則を破った者に罰則を与える力を持つ存在が求められた。そうして立ち上がったのが魔道士協会で、初期は国際警察としての役割を担っていた。現在その権限はさまざまな国際機構に食い込んでいる。
「越権行為だという自覚は? あるよな。お前さんはバカじゃない」
ユーリは頷き、それでは電話の向こうに伝わらないと思ったか「はい」と答えた。
「俺の勝手な使命感と言われればそうです。俺は、家族を守れる魔法使いになりたくて、魔法騎士を志願しました。それなのに、決まりだからといって、妹と年の近い少女の不幸を知らんぷりしたのでは、家族に会わせる顔がありません」
スピーカーは沈黙している。
ソーカルが頭を抱えている姿が容易に想像できた。そして、言いたくないことを敢えて言うつらさも。昨日のトレフル・ブランがそうだったから。彼はは教官という立場上さらに慎重な判断を求められるだろう。
やがて、ソーカルがゆっくりと話し始める。その声には、何かを吹っ切った響きがあった。
「実は、
ユーリはハッと顔を上げた。
「犯罪の証拠を探せ。それを守るという名目で、徴発を行い少女を確保するんだ。信頼できる司法魔道士を超特急で派遣してやる」
キーチェが両手で顔を覆った。涙をこらえているのが分かる。気持ちはユーリも同じだろう、感謝を伝える声が震えていた。彼はスピーカーに向かって頭を下げた。
トレフル・ブランはひねくれた性格の持ち主だったので、脳内ではさっそく現実的な計算をフル回転させていた。
「じゃあ、こういうのはどうですか?」
計画を打ち合わせて、三人は急いで通信局を出た。証拠隠滅の時間を与えてはならない。電話交換手は原則として会話を聞いてはならないことになっているが、魔法装置の仕組み上、盗聴は可能である。わざわざ秘密を守るよう圧力をかけるのはいらぬ好奇心を刺激することになりかねないので、通信局への干渉は避け、スピード勝負に出ることにした。
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