第14話タブレット書庫
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王城の裏口から『勇者庵』に移動しようとしていた時。
「ハルカちゃん、ちょっと待って…これ!」
葵さんが私にタブレット端末とポータブル充電器を差し出してきた。
「タブレットじゃないですか!え、いいんですか?」
「うん!みんなに順番に貸してあげようと思って。ココアちゃんが読めそうな本は入ってないし…大人組のみんなから順番に読んでって!」
大人組というのは、まあココアちゃん以外のメンバーの総称だ。
まだ7歳だったココアちゃんとは話し合えないことも多くあった。
大人組で話し合った内容を葵さんがメインで、ココアちゃんに伝えたり伝えなかったり…
「ありがとうございます!」
スワイプして軽く蔵書を確認すると、大学の教科書となっている教授の本をはじめ、ファッション雑誌、料理本、小説、ビジネス書etc…
「あ!百姓王族は全部読んでよね!あとは、アンサングシンデ」
そうだった…葵さんはキラキラ女子大生の仮面を被ったオタクでもあったんだ…!
「ハルカちゃんには特別にこっちのアプリの暗証番号も教えてあげる…」
「いや。その、えんりょ…」
「遠慮しないで!とりあえず、一回読んでみて!!まず、この軽めのやつから読んで次は…!!」
キラキラ女子大生だが、もう押しが強すぎて横綱並みだ…!
一通り
「今のハルカちゃんに必要な本もあると思うから」
「…!はい!ありがとうございます!」
「あっちの感想、待ってるから…!」
「……は、はい」
もう一つの漫画アプリはきちんとロックがかかっており、その中はまあ…その…メンズとメンズがこう……いう本が大量に入っていました。
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「そうだった、いいもの貸してもらってたんだった」
「それ何っスか!なんか面白そうっスね!」
「あ、うん。タブレット端末って言って、向こうの世界での最新便利アイテム…みたいな?」
「へー!何ができるんっスか?」
「そうだな…たとえば…」
私はカメラを起動しカシャっと、アンちゃんを勝手に一枚撮影する。
「うお!何の音っスか!!」
「ほら、みて!」
鮮明に映る、可愛い不意打ちアンちゃんの写真だ。
左手にお椀、右手にお箸を持ち、興味津々にしている表情がまた何とも言えない。
キメ顔を作ってピースする写真もいいけど、こうカメラを意識していないような写真って楽しいかも…
「うわっ!ウチじゃないっスか!え、すごいっスね!」
「それで、こういうこともできるよ!」
続いて動画を撮影する。
「アンちゃんなんか喋ってみて!」
「え、なんっスかいきなり…あ、このきりたんぽと塩ちゃんこめっちゃ美味いっス!」
ピコンッ
短い動画を撮影し、アンちゃんに見せる。
『アンちゃんなんか喋ってみて!』
『え、なんっスかいきなり…あ、このきりたんぽと塩ちゃんこめっちゃ美味いっス!』
「うちが喋ってるっス!すごいっス!!」
「こういうのを何万枚も撮影できたりするの。あとは、本がたくさん入ってたり、キャンバスになったり…」
「こんなうっすい板でそんなことができるんっスね!これ作って売ったら大金持ち間違いなしっスよ!!」
「やー…これ作れるんだったら、今頃こんなところでお鍋囲んでないよ…」
「ハルちゃん、それはひどいでごわす!でも、これは流石に作れないでごわすね」
「そっスか…まあ、ウチらには他にできることありますっス!それに魔物の革をどう活用するかってのがハルカちゃんの課題っス!」
「そうそう。葵さんの書籍に、役に立ちそうなものがありそうなんだよね…」
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私の借りている部屋にて。
8畳ほどの広さで、水回りは共有スペースにあるため部屋だけがある感じだ。
王都に住む多くの人は毎食外食で済ませるので、一人暮らしの部屋にキッチンやらの水回りがある方が珍しいらしい。
そして、シングルベットにデカデカと大の字で、大きないびきをかきながらアンちゃんが爆睡している。
「もー、私のベットなのにー」
毎回ではないが話が弾みすぎたり、私の明日の予定が(パーティーを首になったりして)ない時に、2次会3次会と駒を進めてしまう時がある。
だいたいアンちゃんが飲みすぎてベロンベロンになるので、私が私の部屋の私のベットに運ぶ羽目になる。
ベットのほとんどを占拠しているアンちゃんを押し退け、体育座りになった私はタブレットを触り始めた。
手始めにファッション雑誌を眺めてみる。
今までは中高生向けのいわゆるティーン雑誌を何度か読んだことはあるが、雑誌世代ではないような気がする。
SNSでトレンドを知り、真似するところは真似をするという感じだった。
大学生から新社会人がターゲット層、葵さんのような人向けの雑誌を見てみると、服やメイク用品の値段が1桁ほど違った。
デパコスと呼ばれる化粧品なんて、1個で1万円越えなんてざらにあるようだ。それを何個も使用してフルメイクと呼ばれる顔面になれるのだ…。
「こんな高くて、頭から爪先まで全部揃えられる大学生なんているの?」
大学生バイトの時給を考えても、何時間働けば買えるのか…全くに謎である。
そして企画ページの間には広告が挟まれている。
年相応に変えそうな商品の広告もあれば、ハイブランドと呼ばれるいわゆる「あこがれのブランド」の広告もあった。
「たっか!!!こんなカバンで、2…22万円…!?」
ブランドモノグラム・パターンが全面に使用されたデザインのお出かけ用バックだ。
肩にもかけられるし、手持ちにしてもお洒落で洗礼されたデザインなのは間違いない。
しかしA4サイズのものは入らなさそうな大きさで、この価格だ…
毎日使いできるなら、365とか、大きな数で割ったら安いとか色々考えられるけど…
驚くべき金額に目眩がしてくる…
「え!!!こんな何が入るかわかんない手のひらサイズバックが40万円…?!?!」
リップと鍵と…あとは薄手のハンカチくらいしか入らなさそうなわけわかめなミニミニバックがこの価格だ…
もはやどういった場面で使用するのかも、庶民の私にはわからない…
どうなっているのだ…
世の中にはこんな金額のものをポンポン買えるお金持ちがいるということなのか…
同じような革だったり、安そうなジュートの生地のバックなのに、どうしてこんなにも価格差があるのだろうか…
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