第13話魔物革製ランドセル
「あれ、これランドセルだよね?」
「そうよ!よくわかったわね!ふふんっ♪
前に王の孫娘とかいう偉そうなクソガキのドレスを依頼された時に、お付きのクソガキが持ってたのよ!いいデザインじゃないって言ったら、私にくれたの!」
ココアちゃんだ…!私より先に私物の返却を受けただろうし…ヴァネッサがお城に行った時に譲ったんだろう。
「どう?クソガキの持ってたランドセルに、私らしいアクセントをつけたのよ!しかも、元のものよりさらに軽くて丈夫で、熱にも強い…まさに、このヴァネッサ様を象徴するような商品になるわ!」
ヴァネッサがランドセルを背負いながら、嬉しそうに語る。
「しっかし、嬢ちゃんよ、この素材はハルカのもんだ。ランドセルも、あくまでもサンプルとして作ったもんだ。こっちが勝手に売るわけにはいかない」
「わ、わかってるわよ!」
ランドセルを背負ったままの彼女は腕を組み、いつも通りの偉そうな態度で続けた。
「この魔物の革、私に卸しなさい!タダで!」
「タダ…はちょっと無理かな」
「はあ????」
「ヴァネッサちゃん、さすがに交渉下手すぎっスよ!」
「嬢ちゃんは、デザイン以外はなーんにもできないんだ…」
アンちゃんは過呼吸になりそうなほど笑い、オスカーさんはため息をつきながら眉をひそめた。
「もーー!おっさん余計なこと言わないで!」
オスカーさんは近くにあった木製スツールに腰掛け、話し出した。
「ちょっと前の話だが、嬢ちゃんは自身の名を冠したお店を開いてたんだ。
嬢ちゃんの年齢ではお店を開くことはできないんだが、特例で認められたんだ。
だが、今みたいに下請け業者と揉めたり、従業員と揉めたり、しまいには客とまで揉める始末…
嬢ちゃんの店はオートクチュール専門店だったから、わかるだろ。
そっからは、あっちゅう間に潰れたよ」
「も、もう!全部言わなくてもいいじゃない!このすっとこどっこい!」
「ああ、そうでしたっスね!ヴァネッサちゃんのお店で働いてた子の愚痴やばかったっスよ!
でも、腕がいい子ばっかりだったんで、すぐに次の仕事決まったっス!」
「たしかに…社会人経験のない私でも、やばいってわかるもん…」
「もーーー!みんなして、私をバカにして!だいっきらい!!!」
「そして借金だけが残ったんだ」
「た、大変ですね…」
「つまり…ランドセルも背負ってるけど、借金も背負ってるってことっスね!」
「ちょっと!誰がうまいこと言えって???」
「ちなみに、ランドセル私たちの世界では12歳までしか背負えないんだけどね…」
「は…!ま、まあ、いいものに年齢なんて関係ないわよ!私まだ14だし!」
「12歳から見たら “ オバサン ” っスよ!」
「わ、私は特別だからいいの!!」
———————————————————
オスカーさんに開発費を含むお金をお支払いした後、アンちゃんと『勇者庵』に足を運んだ。
「おお!これが魔物肉…!任せてほしいでごわす!必ず、美味しい魔物肉を完成させるでごわす!」
「うん!期待してる!じゃあ、きりたんぽと塩ちゃんちゃんこ一人前ずつで!」
「はいでごわす!」
「魔物肉で喜ぶのは異世界人だけっスよ!でも、ハルカちゃんが毒味したあとなら、ウチも食べてみたいっス!」
「ちょっと!なんで私が毒味役なの!」
「へへへっ!」
「さてと…この魔物革をどう料理したものか…」
「え!食うんっスか!?」
「もーわかって言ってるでしょ!革のものだと…やっぱりカバンかな?冒険者に向けて、軽量で耐久性あり耐熱性にも優れた冒険者カバンとか、ウケそうだと思うんだけどなあ…」
「うーん、どうっスかね。『魔物=倒すもの』って方程式が一番出来上がってる連中じゃないっスかね」
「そう、かも…じゃあ、武器を収納する鞘みたいなのは?あー、でも結局値段が高くなるよね…」
「冒険者って響きはいいっスけど、実際そこまで高収入ではないっス…世知辛いっス……」
「私も冒険者の収入って、そこまで貰ってなかったんだよなあ…世知辛い世の中……」
「「はぁーー……」」
「お待ち!!きりたんぽ、塩ちゃんこでごわす!!!」
目の前の囲炉裏に、熱々の大きなお鍋がかけられた。
一つの鍋の中で半分に分けられ、お行儀よく2種類のお鍋が入っていた。
「わー!相変わらず美味しそう!いただきます!」
「いただきますっス!」
「お上がりでごわす!あ、ハルちゃん次に葵さんのタブレット貸して欲しいでごわす!料理本を見たいでごわす!もちろん、読み終わってからでいいでごわすよ!」
「…?タブレット………あ!!」
私は自分のマジックボックスから葵さんのタブレットを取り出す。
そうだった。この間ランチした時に…
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