第12話あのカバン
それから1ヶ月ほどが経った。
オスカーさんから「革」が仕上がったとの連絡を受け、私とアンちゃんは工房にお邪魔していた。
「おっそ。おば…大人ならもっと早く来たらどうですかぁー?」
工房の入り口に寄りかかり、髪を人差し指でくるくるさせる。
本日も偉そうな態度のヴァネッサだが、なんだか前より楽しそうだ。
「約束の5分前だから丁度だと思うよ!」
「ヴァネッサ?言い方考えるっスよ?」
「…ふん!まあ、はやくこっちに来なさい」
プンスカプンスカした態度なのだがなぜだか可愛く見えて来た。
「おう!来たな!」
イケオジのオスカーさんもなんだかそわそわしているようだ。
大きな木製テーブルの上には、オークの革とブロック肉が整然と並べられていた。
「わあ!きれ…」
「製法が確立されていなかったから大変だった…
バラすときにダメージを受けないように、若いので魔力適正があるやつに詠唱してもらったり…
なめしの過程も工夫して…ってまあそれはいいんだ…。
どうだ!美しいだろ!!!」
オスカーさんの口から早口で言葉が紡がれ、この出来栄えに満足したんだなとしみじみ伝わってくる。
「本当にすごいです…!オークって、こんなに綺麗な革になるんですね…!」
「ここまで形になると、魔物ってこと忘れるくらいっスね!」
「おっさんの腕は確かなの。だからこのくらい出来て当然よ!」
ここまで何もしていないはずにヴァネッサがこの場で一番偉そうだった。(かわいいけど)
緑色の革は美しい艶を纏い、吸い付くようななめらかな触り心地で持ち上げてみると、あの巨体のオークの重さからは想像がつかないほど軽かった。
「軽い!!もっと重いと思ってました!」
「このオークだと、『軽量・耐熱・傷に強い』の3点セットになるぞ!」
「すごい…めちゃくちゃ理想の素材ですよね…?」
「その通り!…ただ、その分加工にも技術がいるがな…」
「でも、それを可能にするのがおっさんなの!」
ヴァネッサが奥の棚から取り出したのは、緑色の美しい…
ランドセルだった。
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