電撃文庫を目指してみる

 私はライトノベルというものを書いてみたくなりました。「俺妹」は基本的に主人公の一人称視点で、読みやすい文体で進んでいく作品です。それを読んでいた私はこう思ったのです。……自分にも書けるのではないか、と。


 もちろん「俺妹」はかなり完成度の高い作品です。アレと同レベルの作品を書けと言われても出来るはずがありません。しかし当時の私は「書けそう」と思ってしまったのです。高い技術を駆使した文章をそうとは悟らせない伏見つかさ先生の技術には恐れ入ります。


 さて、書くと決めたら書かなければなりません。ですが当時の私は「小説家になろう」や「カクヨム」といったサイトを知らず、「書いたものをどうするか」という発想を持ち合わせていませんでした。そこで目についたのが「電撃大賞」でした。


 ラノベの知識があまりない私でも電撃大賞の存在は知っていました。そもそも「俺妹」が電撃文庫から出版されていますしね。


 兎にも角にも、私は「じゃあ書いたラノベを電撃大賞に送ろう」と思ってしまったのです。今思えば無謀な挑戦です。


 そもそも電撃大賞は数ある新人賞の中でも相当難易度が高く、簡単に通るものではありません。(こういう言い方をするのはおこがましいですが)競争率の低い公募は他にもありますし、初心者が電撃を目指すのはかなり無理があります。しかし当時の私は「電撃」以外の選択肢を知らなかったのです。無知は罪ですね。


 とりあえず、いろいろと小説の構想を練ってみました。SFやラブコメ、果てはスポーツものなど。様々なジャンルの作品を考え、設定を起こしたりもしました(このとき考えた設定のいくつかは後に小説化して「カクヨム」等で公開しています)。


 しかし設定を考えてみたはいいものの、まったく本文が書けませんでした。せいぜい千文字くらい書いて筆が止まってしまうのです。今思えば、全くの初心者が千文字書けたら(我ながら)結構すごいのですが、当時は心を折られました。


 最初は「締め切りが〇月〇日か、じゃあ今から書けば余裕だな~」などと呑気に構えていたのですが、全く筆が進まないままどんどん時間だけが過ぎていきました。そして結局、私は一本も作品を完成させることが出来なかったのです。


 その時初めて、小説を書くということがどんなに大変なことかと思い知らされました。技巧的な構成を織り込むことも、芸術的に文章を装飾することも、読者の目を引くキャッチーな要素を取り入れることも、何一つ出来ていませんでした。小説を書くうえで必要なことが全く足りていなかったのです。


 私は電撃大賞、というか小説を書くこと自体を諦めました。そこからしばらくの間、全く小説とは関わりのない時間を過ごすことになります。

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