大学生がラノベ作家を志し、筆を折り、再び書き始めるまで
古野ジョン
全ての始まりは、妹
皆さんは「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」という小説をご存じでしょうか。メディアの枠を越えたコンテンツとして一世を風靡して、今でも世界中で愛されています。
ブームが全盛期だった頃、私はまだ小学生くらいでした。「俺妹」というタイトル自体は知っていましたが、アニメを観たり原作小説を読んだりはしませんでした。むしろ当時は再放送されていた「ふしぎの海のナディア」にハマっていたと思います。
中学に上がったあと、とあるアニメを観ることになります。そう、かの有名な「涼宮ハルヒの憂鬱」です。私はあまりラノベ原作のアニメを観たことはありませんでした。しかし「ハルヒ」の視聴はあまりにも衝撃的な体験で、こんなに面白い作品があるのかと感銘を受けました。ちなみに最初はエンドレスエイトのことを知らず、馬鹿正直に八回観てしまいました。無知は罪ですね。
ハルヒに夢中だった私は本屋に行き、原作小説(「憂鬱」だけですが)を購入しました。地の文が(アニメにおける)キョン君の語りそのまんまであったことにまたも衝撃を受け、何回も繰り返し読みました。今でもハルヒを読むと杉田智和さんの声で再生されます。
その頃は割と読書するタイプの人間だったので、ハルヒに限らずいろいろな小説を読んでいました。特に有川浩さんや伊坂幸太郎さんの作品を好んでおり、お気に入りは「キケン」と「ゴールデンスランバー」でした。
しかし読書家だったにもかかわらず、自分で小説を書こうなどとは思っていませんでした。別にこれは不思議なことではないでしょう。世の中には読書を趣味とする人間が多くいても、大部分は自分で書くことはしていません。単に私もその大部分に過ぎなかったのです。
高校に進学したあと、私はあまり本を読まなくなりました。図書室になんとなく馴染めなかったのと、インターネットサーフィンが新たな趣味になったことで、読書に対するモチベーションが失われたのです。
その後、一年間の浪人を経て大学に進学しました。パンデミックのこともあり、入学当初は暇を持て余していました。そこで気になったアニメをちょくちょく観たりしていたのですが、その中でひと際面白いと感じたものがありました。それが冒頭に出てきた「俺妹」なのです。
なぜ「俺妹」が特別面白いと思ったのか。作品の中で重要になるのが「兄妹」という関係性です。主人公は妹のために東奔西走して、妹は主人公に対する思いを少しずつ明かしていきます。そして二人の距離が近づくにつれ、「兄妹」という関係性の持つ残酷な側面が浮き彫りになるのです。作品中の緊張感が、ある種の面白さを生み出していたのだと思います。
私はハルヒのときと同様に原作小説を購入しました。しかし大学生というのは中学生に比べれば経済的に余裕があります。何を思ったか全巻を大人買いし、家に届いたその日のうちにほとんど読破してしまいました。それほどまでに「俺妹」は面白かったのです。
さて、「俺妹」を読んだ私はある願望を抱えるようになります。別に妹が欲しいとか後輩ヒロインが欲しいとかそういった類の願望ではありません。端的に言えば、自分でもライトノベルを書いてみたくなったのです。
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