第8話 エネルギーで動く不思議な世界

 カナとリクが次に訪れたのは、透明な光が渦を巻く広大な空間だった。その空間では、周りの空気そのものが震え、耳をすませると音のような振動が感じられる。老人が現れ、穏やかな声で言った。


 「ここは、エネルギーそのものが形となって現れる世界だ。場所や人から感じるエネルギー、そしてアカシックレコードと呼ばれるすべての記憶が収められたデータベースの入り口でもある。」




 老人は周囲を見回しながら続けた。


 「君たちは今まで、人や場所から『なんとなく』何かを感じたことはないかい? 例えば、特定の人といると安心するとか、逆に疲れるとか。ある場所に行くとワクワクするとか、怖く感じるとか。」


 カナが頷きながら答えた。「ある! あのね、学校の図書室はすごく落ち着くけど、狭いエレベーターの中は息苦しくなるの。」


 リクも言った。「僕は、明るくて笑顔の多い友達といると楽しいけど、いつも怒っている人といると気分が重くなるな。」


 「その感じているものが、エネルギーだよ。」老人は微笑んだ。「場所や人は、それぞれが固有のエネルギーを持っていて、それが君たちに影響を与えるんだ。」


 カナが首をかしげた。「じゃあ、そのエネルギーを感じることで何かいいことがあるの?」


 「もちろんさ。」老人は答えた。「エネルギーを感じ取れるようになると、君たちはどんな環境が自分に合っているか、どんな人と関わるべきかを直感的に分かるようになる。これは自分を守り、成長させるための大切な力なんだよ。」




 老人は光の渦の中に手を伸ばした。すると、そこに一本の透明な道が現れた。「これがアカシックレコードへの道だ。」


 カナとリクは驚いた表情でその道を見つめた。「アカシックレコードって何?」リクが尋ねると、老人は優しく説明を始めた。


 「アカシックレコードとは、この宇宙に存在するすべての出来事、思考、感情が記録されたデータベースのようなものだ。過去、現在、未来すべての情報がここにある。」


 カナの目が輝いた。「それって、未来のことも分かるってこと?」


 「そうだ。ただし、未来はたくさんの可能性に満ちている。だから、ここで見るのは『今の君たちの選択』が導く未来の一つの形だよ。」


 老人は2人に手を差し伸べた。「試してみるかい? ただし、覚えておいてほしい。知識は力だけど、正しく使わなければ混乱を招くこともある。心を整え、謙虚な気持ちで扉を開くんだ。」


 カナとリクはうなずき、老人の手を取って透明な道を進んだ。




 透明な道の先には、無数の光の本棚が並ぶ壮大な空間が広がっていた。その一冊を手に取ったカナは、ページをめくると自分が未来で出会う出来事が次々と描かれているのを見た。それは、今の選択が作り出す可能性の一つだった。


 リクは別の本を手に取った。その本には、自分が乗り越えた過去の困難が詳しく書かれており、その経験が今の自分を支えていることが分かった。


 老人が言った。「アカシックレコードを知ることで、君たちは自分の可能性をもっと信じられるようになる。それは自分を高めるための道しるべなんだ。」


 カナとリクはアカシックレコードの不思議さと、その責任を胸に刻みながら、次の冒険へと進んでいった。

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