第9話 天使と悪魔 ~見えない存在の役割~
リクが目を覚ますと、辺りは真っ白な霧に包まれていた。カナも隣で目をこすりながら起き上がる。目の前に立つのは、白い翼を持つ優しい顔の天使と、黒いマントをまとい鋭い目を持つ悪魔だった。
「君たち、ここにたどり着くとはなかなかだね。」天使が微笑む。悪魔もニヤリと笑った。「さて、どっちが君たちの味方だと思う?」
カナとリクは顔を見合わせた。
天使が静かに話し始めた。「私たちは、人々が善と悪の違いを学び、成長するために存在しているんだ。けれど、善だけが正しいわけではないし、悪がすべて悪いわけでもない。」
カナが首をかしげた。「どういうこと?」
悪魔が低い声で答える。「例えば、君が誰かを守るために立ち向かう時、時には厳しい選択をしなければならない。それは一見すると『悪いこと』に見えるかもしれないが、本当は君の勇気と愛の表れだ。」
天使が頷く。「そう、善と悪は表裏一体。どちらも必要であり、バランスが大切なんだよ。」
リクが思い出すように言った。「学校で、いじめっ子を止めるために大声を出したら先生に怒られたことがあった。でも、それをしなかったら友達はもっと傷ついてたかもしれない。」
「その通り。」天使が答えた。「君たちの中には善と悪の両方がある。そして、それをどう使うかが君たちの本当の価値を決めるんだ。」
突然、周囲の霧がゆっくりと渦を巻き始めた。目の前に光と影が交差する空間が広がる。天使が言った。「ここは、時間の流れが歪む場所だ。過去と未来が交わる瞬間を見ることができる。」
カナとリクが光と影の渦を見つめると、それぞれの中に違う場面が映し出された。
カナは、自分がまだ赤ちゃんだった頃の母親との情景を見た。母が眠れない夜を過ごしながらも、優しく抱きしめてくれている姿だ。
リクは、未来の自分が仲間たちと共に大きな困難に立ち向かう場面を見た。その顔は疲れているが、確かな決意に満ちていた。
悪魔が口を開いた。「未来は固定されたものではない。今の君たちの選択が、未来を形作る。」
天使が続けた。「過去もまた、君たちの力になる。どんなに辛い経験でも、それをどう受け止めるかで未来が変わる。」
カナが尋ねた。「じゃあ、この場面を見てどうすればいいの?」
「信じるんだ、自分を。そして、選択を恐れないこと。」天使は優しく答えた。「過去の教訓と未来の可能性を活かしながら、今という瞬間を精一杯生きるんだよ。」
2人は天使と悪魔に見送られながら、再び冒険の道を進んでいった。
善と悪、過去と未来――そのすべてを知ることで、彼らの心は一回り強くなった。
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