第7話 光と影 ~2つのエネルギーのバランスを学ぶ~

 カナとリクが次に訪れたのは、太陽と月が同時に輝く不思議な空の下に広がる森だった。その森の中には、光が降り注ぐ明るいエリアと、深い影が覆う暗いエリアが交互に現れる。「ここでは何を学ぶのかな?」リクが首をかしげると、再び老人の声が響いた。


 「この森は、君たちがこれから学ぶ『光と影』の象徴だよ。人生にはポジティブとネガティブ、両方のエネルギーが存在する。そして、それらはどちらも欠かせないものなんだ。」




老人は話し始めた。


「多くの人はポジティブなエネルギーだけが良いものだと思っている。でも、それは半分だけの真実なんだ。ネガティブなエネルギーにも大切な役割があるんだよ。」


 リクが疑問を投げかけた。「でも、ネガティブって悪いことじゃないの? 怒りや悲しみは苦しいし、避けたいものだと思うけど…」


 老人は森の中の大きな木を指差した。その木は光のエリアと影のエリアの両方にまたがって育っていた。


 「見てごらん。この木は光があるから成長できるけど、影があるからこそ根を深く張れるんだ。光だけでは、土が乾ききってしまい、木は育たない。同じように、君たちの人生にも光と影の両方が必要なんだ。」


 カナは木を見つめながら言った。「じゃあ、私たちが感じる悲しみや失敗も、成長に必要なものってこと?」


 「その通りだよ。」老人は微笑んだ。「ネガティブな感情や出来事は、君たちに気づきや学びをもたらす。そして、それを乗り越えた時、君たちはもっと強くなれるんだ。」




 老人はさらに続けた。


 「ネガティブなエネルギーは、正しく使えば大きな力になる。例えば、怒りは物事を変える行動力を生む。悲しみは、他人の痛みを理解する優しさを生む。大事なのは、それをどう使うかなんだよ。」


 カナとリクは、自分たちがこれまで経験してきたネガティブな出来事を思い返した。学校での失敗や友達との喧嘩。リクは特に、怒りのエネルギーをコントロールするのが苦手だったことを思い出した。


 「じゃあ、僕が怒るとき、そのエネルギーをどうやって良い方向に使えばいいの?」リクが尋ねると、老人は笑いながら言った。


 「怒りをただ爆発させるのではなく、そのエネルギーを行動に変えるんだ。例えば、不公平だと感じることがあれば、それを正すために動いてみるとかね。そして、怒りを感じた後は、必ず深呼吸をして心を落ち着けることを忘れないことだ。」


 カナも頷きながら、自分が悲しいときにその感情を抑え込まず、紙に書き出すことで心が楽になることに気づいた。



 2人は老人から教わった「光と影のバランス」を使いながら、森を進んだ。影の中では、恐れを克服するために互いに手を取り合い、光の中では、未来への希望を分かち合った。


 森を抜けると、老人が言った。「ポジティブもネガティブも、どちらも君たちを強くするエネルギーだ。それを理解し、使いこなせるようになった時、君たちは本当の意味で自由になれるだろう。」


 カナとリクは、自分たちの中にある光と影の両方を大切にしながら、また一歩成長していった。

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