第3話 時代がくれる新しい力 ~土の時代から風の時代へ~

 放課後、カナはリクに誘われて図書館へ向かった。彼が見せてくれたのは、古い歴史の本だった。本の中には、ある時代の変化について書かれていた。


 「カナ、この本に書いてあること、すごく面白いんだよ。」


 リクはページを開きながら話し始めた。「昔は『土の時代』って言われてたんだ。みんな、一生懸命働いて、物を増やして、頑張ることがすべてだって信じてたんだよ。」


 「でも、今は違うの?」


 リクはうなずいた。「うん。今は『風の時代』に入ったって言われてる。頑張るだけじゃなくて、目に見えない力――情報とか、アイデアとか、人とのつながり――がすごく大事になってきたんだ。」


 カナはリクの言葉に耳を傾けながら、本の挿絵をじっと見つめた。土を耕す人々と、空を自由に飛ぶ風の精霊が描かれている。


 「風の時代って、なんだか自由で楽しそうだね。」


 「そうだね。でも、その自由をちゃんと活かすためには、新しい力を知る必要があるんだ。」




 リクが言う「新しい力」とは、エネルギーを受け取ることの大切さだった。「土の時代では、努力して物を手に入れることが重要だった。でも、風の時代では、受け取ることで、もっと大きな可能性が開けるんだ。」


 カナは首をかしげた。「でも、受け取るだけでいいの?なんだか、怠けてるみたいに聞こえるけど……。」


 リクは笑った。「そう思うのは、土の時代の考え方がまだ残ってるからだよ。受け取るっていうのは、ただじっと待ってることじゃないんだ。それは、自分の心を開いて、必要なものをちゃんと受け入れることなんだ。」




 その夜、カナは家で窓を開け、静かな風に耳を澄ませていた。リクの言葉が頭をよぎる。「受け取る」ってどういうことなんだろう?


 次の日、リクはカナを連れて丘の上に行った。広い空を見上げると、風がやさしく髪を揺らした。


 「カナ、目を閉じてみて。風が何を伝えてくれるか、感じてみて。」


 カナは少し不安だったけれど、リクの言葉に従って目を閉じた。風が頬を撫で、木々の葉っぱがそよぐ音が聞こえる。心の中が少しずつ静かになっていくのを感じた。


 「どう?」リクが尋ねた。


 「なんだか、穏やかな気持ちになった。」


 「それが『受け取る』ってことなんだよ。」


 リクは笑顔で答えた。「受け取るっていうのは、何かを感じて、それを自分の力に変えることなんだ。そして、その力で未来の扉を開けることができる。」




 丘の上から見える景色は広がる世界のように、無限の可能性を秘めているように思えた。


 「カナ、この風の時代を一緒に冒険しよう。目に見えない力を感じて、それを未来につなげるんだ。」


 カナはその言葉にうなずいた。彼女はリクとともに、風の時代がくれる新しい力を探す旅に出ることを決めた。風がやさしく吹き、2人の背中を押しているようだった。

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