　カナは学校の帰り道、リクと一緒に歩いていた。夕焼けが街をオレンジ色に染める中、リクが突然こんな話を始めた。

　「ねえ、カナ。エネルギーって知ってる？」

　「エネルギーって、電気とかガソリンとかのこと？」

　リクは笑って首を振った。「そういうエネルギーもあるけど、僕が言ってるのは、目に見えないけどすごく大事な力のことなんだ。」

　カナは首をかしげた。「目に見えない力？それって魔法みたいなもの？」

　リクは少し真剣な表情になった。「うん、魔法って言ってもいいかも。でもね、それは誰もが持っている力なんだよ。」

　リクが言うには、このエネルギーは人の感情や思考と深く結びついているという。たとえば、楽しい気持ちやワクワクする気持ちが強いとき、このエネルギーはキラキラと輝いて人を助けてくれるらしい。逆に、不安やイライラが強いときは、エネルギーが弱くなって、何をやってもうまくいかなくなる。

　「だから、僕たちが本当に大事なことをしたいとき、このエネルギーを上手に使うのがカギなんだ。」

　カナは少し興味がわいてきた。「どうやったらそのエネルギーを強くできるの？」

　リクは立ち止まり、空を指さした。「まずは自分がどんな気持ちでいるかに気づくこと。そして、それを少しずついい方向に変えていくんだよ。」

　翌日、リクはカナを公園に呼び出した。そこで彼が話したのは、「がんばる」だけでは成功できないということだった。

　「カナ、頑張るのはもちろんいいことだよ。でも、それだけだと時々空回りしちゃうことがある。」

　「空回り？」

「そう。たとえば、全力で走り続けたら、いつか疲れて倒れちゃうよね。でも、そこで水を飲んだり、休んだりすると、また元気になれる。それと同じで、受け取る力っていうのが必要なんだ。」

　カナは考え込んだ。「受け取る力って、どうやって身につけるの？」

　リクは公園のベンチに腰を下ろし、小さな木の葉を拾い上げた。「たとえば、こうして自然を感じることだって、エネルギーを受け取る練習になるよ。それから、人に助けてもらうことを素直に受け入れるのも大事なんだ。」

　「でも、それってなんだか恥ずかしい気がする……。」

　リクは優しく笑った。「最初はそうかもしれない。でもね、エネルギーは流れなんだ。自分が受け取れるようになると、周りの人にもその力を分けてあげられるんだよ。」

　カナは、リクの言葉を聞いて少し勇気が出てきた。頑張るだけじゃなくて、受け取ることも大事。それは、自分を大切にすることにつながるんだと感じた。

　その日、公園を出るとき、カナは小さな風が自分の頬を撫でるのを感じた。それは、見えないけれど確かに存在するエネルギーの優しい証のようだった。

　「カナ、これからは一緒にエネルギーの秘密をもっと探そう。」

　リクの言葉に、カナはうなずいた。彼女の胸の中には、新しい冒険への期待が静かに燃え始めていた。

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