第12話
## 第二節 変わりゆく日々
「タナカ連合への対抗策として、まず地方自治体への働きかけを強化し、住民票システムの改修から着手することで......」
区役所の会議室で、カナコが熱心に説明を続ける。ホワイトボードには「タナカ包囲網」という文字の周りに、様々な戦略が書き込まれていく。
「それと、各都道府県の議会にも根回しを始めていて、すでに複数の自治体から前向きな反応が......」
ナオミは懸命に聞き取ろうとするものの、次々と飛び交う専門用語と戦略的な議論についていけない。
「ちょっと、休憩とらせてもらってもええですか......」
会議室を出たナオミは、廊下の窓際で深いため息をつく。タロウが追いかけてくる。
「大丈夫か?」
「うん......でも、なんかもうついていけへんようになってきた。タナカ連合がどうのこうのって、ウチにはちょっと......」
「でも、お前が考えた改革やろ?」
「そやけど......ウチ、ただみんなが平等になったらええなって思っただけやのに。なんで敵対したり包囲したりせなあかんの?」
窓の外では、初夏の陽光が区役所の中庭を照らしている。ふと、コンビニのバイトが懐かしく思えた。レジを打って、商品を並べて、時々お客さんと雑談する。そんな単純な毎日が。
「タロウ、ウチ、これでええんかな......」
「どういうこと?」
「だってウチ、なんにも分からへんのに、みんなすごい期待してはって。『タナカ連合に勝つ』とか『社会を変える』とか、そんな大それたことできるんかな」
タロウは優しく微笑む。
「そんなん気にせんでええ。お前にしかできんことは、お前にしかできへんねん」
「でも......」
その時、イトウ教授が顔を出した。
「ナオミさん! 朗報です。関西の経済界から、タナカ連合への対抗として全面支援の申し出が......」
また新しい展開。ナオミは小さくため息をつく。窓から見える空は、いつもと変わらず青かった。でも、自分の立っている場所は、確実に変わってしまっていた。戦いの真っ只中へと。
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