第3話

 【山崎の戦い】は、一方的だった。

 山を利用した戦術だと知っていれば、局所戦で負けることはない。

 大軍を配置できない地形であると分かれば、包囲戦術に切り替えればいい。

 天王山も取ったし。


 ちなみに、信孝と信雄は呼んでない。信長様の弔い合戦だけど、織田家は呼ばなかった。正直、あの二人は今後を考えても不要だ。


 敗戦を悟った明智光秀は、退却した。

 光秀は、坂本城へ向かったそうだ。追手は出さない。

 天海に名を変えて生き延びるとか、聞いたことあるけど、俺は信じない。


 数日後、光秀の首が送られてきた。

 落ち武者狩りをした農民には、恩賞を弾んだよ。



「さ~て、この後の出来事は、安土城の炎上かな?」


 これは、俺が安土城へ入ればいい。

 放火犯は、信長の次男とか三男とか色々説があるけど、明確じゃない。

 俺個人としては、燃やされなければそれでいい。


 安土城は、すっからかんだった。略奪された後だな。

 城下町も、物資がなさそうだ。

 明智軍は、援軍がないと分かっただけで、ここまで略奪をしたんだな。そりゃ、支持を得られる訳もない。

 部下に頼んで、食料を運ばせる。炊き出しからだよね。


「これから復興だな~。織田家の威信を回復しないとな~」



 次の日に、羽柴秀吉が来た。

 安土城で出迎える。

 部下はボロボロだな。中国大返し……。一日40キロメートルを鎧を着けながら走ったんだよね。

 まさに徒労だ。正直、近畿地方で兵が集まると分かっていれば、将だけ来ればいい。まあ、歴史を知らないとそんなことは言えないけどね。


「おう? 秀吉殿。毛利は大丈夫なのか?」


「……急いで帰って来たんですけど、全部終わっていたんですね。柴田殿は、神速ですな」


 君が来ると知っていなければ、未だに魚津城だったんだよ。

 府中三人衆は大丈夫かな? 反撃喰らってたら儂の落ち度だ。


「光秀は討ち取ったので、後は後継者選びかな~」


 ここで秀吉の眼が光ったのを見逃さなかった。

 だけど知ってんだよ。秀吉はこの時点で金をバラ撒き過ぎてもうスッカラカンだ。

 怖いのは、黒田官兵衛だけど、秀吉の信頼も地に落ちただろう。


 数日後だけど、府中三人衆から連絡が来た。上杉家と和睦を結べたんだ。

 部下が優秀だと、自由に動けて嬉しいよね。





 天正10年6月27日、清須城で【清須会議】が開かれた。

 柴田勝家、丹羽長秀、羽柴秀吉、池田恒興の4人が集まった。

 羽柴秀吉は、わざと遅刻することを知っているので、3人で始める。


「織田信雄と織田信孝のどちらを後継者にするかですな」


 2人共性格に問題あるんだよね。

 議論が始まる。俺は暫く黙って聞いていた。


「柴田殿の御意見を聞きたいのですけど?」


 丹羽長秀と池田恒興を見る。


「儂は、三法師様だと思う。信長様は、家督を信忠様に譲ったの忘れてない?」


「「「えええ? 三方師様は3歳ですぞ?」」」


「信雄と信孝に任せられると思う? ならば、3歳から天下人として教育した方が良くない? 成人するまではさ、この4人で支えて行こうぜ!」


 皆黙ってしまった。あの2人の愚行は、みんな知っている。信長様が殺そうとしたくらいだし。

 そして、後継者が三方師様に決まった後に、秀吉が来た。

 口をパクパクしているよ。



 後見人には、光秀を討った儂が選ばれた。

 それと、信長の妹のお市の方だ。ちょっと揉めたけど、俺に嫁いでくれることになった。なんか、秀吉の後押しもあったのだとか。


「織田家家臣筆頭……。これで今打てる手は全て打ったはずだ」

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