第2話

 まず儂は、噂を流した。近畿地方全域に乱波らっぱを放つ。


『織田信長は、生きている。秘密の逃げ道を使って逃げたのだ。傷が癒え次第、軍を興すだろう』


 もうね、噂好きの商人が広めてくれるよ。後で何か買ってあげよう。

 そして書状を、近畿付近の大名に出した。

 これだけで、明智光秀に協力する人が激減するのを知っている。

 猿(羽柴秀吉)の策略を先に使わせてもらった。多分だけど、黒田官兵衛あたりが考えた策略だよね。


「光秀の現在地は分かる?」


「坂本城から安土城へ向かったみたいです。そこで、留まっているみたいっす」


 まっずいな~。このままだと安土城は、火を放たれてしまう。だけど、消失は10月だからまだ余裕あるか? 放火犯は、分かっていないので、明智軍とも言い切れない。

 だけど、10月までには、俺が入城しないといけないな。


「う~ん。今頃、安土城の金銀財宝を部下に与えている頃かな~。信長様の茶器とかだったよね」



 今日は、6月9日だ。残り4日で、秀吉が来る。

 そういえば、徳川家康さんは、今頃【伊賀越え】中かな? まあ、成功するだろう。

 穴山梅雪が、討ち取られてしまうけどそこまで手が回らない。彼は、武田家の正統後継者を自称してんだよな。後々、色々と使い道があったんだけど、もうしょうがない。


「とにかくさ、兵を集めて。明智軍は、一万三千だと思うから、倍はほしいな~」


「「「えええ? 今から!?」」」


 儂の一言で、部下が奔走してくれる。長年付き従ってくれた優秀な部下達だな。


「のう、勝家殿。儂は隠居することにする」


 細川藤孝からだった。

 責任を感じていそうだ。親戚にあたる明智光秀に参加したいのと、織田家の忠誠心で揺れているみたいだ。だけど隠居しても子供に責任を負わせるのは、どうかと思う。忠興くんだっけ?


「う~ん。細川軍を貸してくれない? 旗を変えれば、細川軍と分からんでしょ?」


「まあ、それぐらいであれば。ただ、細川家の名は出さないでいただきたい」


「OKよ~」


 よし、これで兵士が増えた。

 その後、筒井順慶に手紙を出すと、味方になってくれたよ。

 高山右近も来た。


(よしよし、歴史通りだ。これで秀吉が来ても、援軍は少ない)


 ここは、時間との勝負だったね。

 そして、猿(秀吉)が来ても、もう味方になる軍はいない。





 明智光秀は、焦っている様だ。細川家と筒井家が味方にならなかったからだ。

 この時代の、主君殺しは、かなり忌避されるんだな。


 秀吉が来るまで、後3~4日。

 戦力は互角だけど、光秀に手紙を送った。


『3日後に、山崎の地で決戦しようぜ! 柴田勝家より』


 返事はすぐに帰って来た。


『委細承知 明智光秀より』


 ここで三成の取れる最上の策は、天皇を巻き込むことだ。京都守護代でも受けられれば、誰も攻め込めなかったのにな。天皇を巻き込まないその高潔さが、命取りになったと、誰かが言っていたな。


 京都は、俺が抑えた。

 時間をかければ、織田家家臣団が包囲網を敷くので、光秀も時間がないのは一緒だ。


「もうこの時点で逃げ場はないよね。後は、誰が光秀を討つかだな~」


 そして、その後だ。

 【清須会議】で少しでも優位に立ちたいのが本音だ。

 猿(秀吉)なんぞに織田家を潰されてたまるか。

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