第2話「罰ゲームニ日目〜七日目」
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二日目
新緑の季節。若葉が生い茂る中、もし告白成功したら夏は灰色の青春脱出だなと友人に心にもない事を囁かれて腹が立つ。
だが、色んな感情が入り乱れながらも、立花の机に手紙を入れて放課後また空き教室へ呼び出しを試みた。
「立花、好きだ」
「高橋いい加減にしてくれない? 昨日断ったよね」
いかにもウザそうに髪を掻き分ける立花。呆れと怒りが混ざりあった顔が僕の心へ突き刺さる。
「ごめん。でも僕と付き合ってください」
「お断り。あんたみたいなモブに興味ないし、話をする価値もない。金輪際私の視界から消えて」
出来レース、消化試合とはいえ、辛いものがあるな。
立花は同性の人気はカリスマ的高いが異性からはもろ嫌われていた。美少女だがあの通り上から目線&高圧的な態度なので、その趣味のやつにしか好かれない。
だから今回のターゲットに選ばれたというのもある。絶対に告白しても受託されることはないからだ。まさに罰ゲームに相応しいチョイス。
三日目
静かに嘆息をつく僕。あれだけ立花に拒絶されたんだ、呼び出しても来ないだろう。
恋愛経験者じゃない僕ではここからの展望が予測できない。これは詰みかな……と友人達に終わりを持ちかける。
だが悪友の中にノリがいい女子もいて、情報とセッティングを手伝ってくれた。
余計なことを……。
サボるとどこから見張っているか分からない友人達が馬鹿にするので、立花のタイムスケジュールを手に入れた僕は渋々放課後先回りして夕焼けが入る廊下で待ち伏せする。
「はぁ……あんたのオツムはお飾り? セールスでもここまで忍耐強くないわよ」
「君が好きだ」
「お願いだからやめて。告られるこっちが恥だよ」
「付き合ってください」
「私は大嫌いだよ。夢に出てくるからもう側に寄らないで」
猫っぽい切れ長の目がさらに 一段細くなる。踵を返すとショートの髪が揺れた。
大嫌いか……効くなぁ。
四日目
登校時間バス停で待機中の立花へ奇襲攻撃を掛ける僕。五時起きだからきついが立花はバレーボール部所属の女子バレー選手。朝練で登校が早いから詮なきこと。
「君が好きだ」
「………………」
だが陰の頑張りもスマホから目を離さず何も反応せず。ワイヤレスイヤホンで音楽聴いているからなんだろうか? でも日課だからセリフはキメさせてもらう。
「僕と付き合ってくらさいいい! イタッ!」
「…………」
もろくそ舌噛んだ。でも幸い無視される。良かった、立花が聞いてなくて……。
もうこれ無理だろうなぁ。最悪クラスで噂になって学校中の女子達から嫌われると豆腐メンタルな僕では残り二年間生きていけない。
過去、彼女に立ち向かった勇者は結構いる。顔・スタイル抜群・運動万能・勉学もそこそこ、性格以外はほぼパーフェクトなんだ。綺麗な花に立ち向かわない男はいない。その数多くのイケメン達をほふってきた魔王。そんなのに村人Aの僕が太刀打ちできるわけがないじゃないか。
その場にいづらくなって立ち去ろうとする間際、彼女の背中がプルプル震えていた。寒いのかな?
七日目
五、六日目アタックも敗北して日曜。立花の実家でもある商店街の持ち帰り専門焼き鳥屋へ来た。この時間帯は家の手伝いをしていることが多い。
ここまでやりたくないけど、暇な友人達が遠くから観察しているのは丸解りだからテンプレート作業。
「好きだ! これください」
「迷惑です…………八百五十円になります」
「付き合ってください」
「お釣りです。お申し出はお断りします」
接客モードなので断り方も柔らかい。
「立花こんなところまで押し掛けてきてごめん」
「高橋もしぶといわね。ここまでやって来るとライバル店の営業妨害にしか感じないよ」
「他意はないよ。使命を全うしているだけ」
「なにそれ?」
立花も諦めたのか適当に付き合ってくれるようになった。
「じゃまた」
「うん、またあし⸺ゲフンゲフン、なんでもない!」
帰れ! シッシッと塩をかけられる。店内から商売用の使うな! とおやっさんから怒られた。
何を言いかけたんだ?
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