アメリカ
「じゃあ、潜入しますか!『Gift』へ、レッツゴー!」
私達は、扉を開けた。
ー5時間前ー
「とりあえず、潜入するには、間取を知っておく必要があるね。まあ、それに関しては問題ない。地下の水道の警備員の顔と本名特定したから。あとは私がナツキちゃんの頭を持った状態で瞬間移動すればいける。」
「なるほどね~。いいじゃん。」
「で、とりあえずポンプショットガンを購入しておいたから、近くの廃墟に今頃荷物が送られていると思う。」
ショットガンか。
反動とかすごそうだな。
サバゲ―の時もポンプショットガンはかなり愛用していた。
シンプルな見た目だが、近距離の銃撃戦ではとんでもない威力を発揮する。
「ショットガン...いいねー。私も本物は撃ったことがないからね。」
私の言葉に、ナナは笑顔を見せ、
「じゃあ、さっそく取りに行こ!」
私は、無言で親指を立てた。
私は、ホテルのチェックアウトを済ませ、ホテルを後にした。
「でも潜入して情報を盗み出すなんて、楽しみだね!」
そんなのんきなことを言うナナと共に私はポンプショットガンが届いている建物まで歩いて行った。
「でも、警備員のところにテレポートするってことはその人を殺さないといけないってこと?」
もうすでにリオンを殺しているから、いまさらといえば、今更だがなんの罪のない人を殺すのは気が引ける。
ショットガンは弾を散弾させているので近距離の敵を確実に殺すものだ。
足を撃っても、撃たれた人の足は二度とまともに使えないだろう。
あ、ピストルがあったか。
もうそろそろ着くかな。
「あ、あった。」
廃墟になった学校の前にきれいな段ボールがぽつんと置いてあった。
「おー!ショットガンだー!」
ナナは段ボールのところまで走って行って、急いで開けていた。
「うわー!ショットガンだ!かっこいい!」
ナナの目が滅茶苦茶キラキラしてる。
だが、見ているのはショットガン。
滅茶苦茶シュールだ。
ー10分後ー
ナナは私の頭とショットガンをリュックに入れ、ショットガンを1つ持っていた。
ナナの周りの空気が歪む。
次の瞬間、気温が変わった。
違う場所に移動したのだと、感覚で分かる。
「あ!誰だお前!?どこから来た!?」
『どん』『どん』
銃声が鳴るたびに、血や肉が飛び散る音が聞こえる。
リュックの中にいるから目は見えないが、音は聞こえる。
逆に、音しか聞こえないからこそさらに残酷に思える。
一拍遅れて血の匂いが来る。
今にも吐きそうだ。
首無いから吐けないけど。
「警備は片付けたよ。もう再生して大丈夫。」
彼女は、私の頭をリュックから取り出し、地面に置いた。
私は徐々に体を再生させ、見事に全裸になった。
「やっぱナツキちゃんのおっぱい良いねー。形と大きさ、両方がパーフェクトだよ。」
私のおっぱいを観察するのはやめてほしい。
「私のおっぱい眺めないでよ。お前はおっぱいソムリエか?」
「あっははははー、ごめんごめん。服は最高に動きやすいのを用意しているから。」
彼女は自信に満ちた笑顔で、リュックの中へ手を突っ込み、服を探していた。
「えーとー、どれどれー。あ!あった!これこれ。この服良いでしょー?」
彼女が出したのは体操服。
「なんで体操服にしたの?」
「動きやすくて可愛いから。」
「はあ.....分かった、着るよ。」
「やったー!ありがとうー。」
私は、渋々体操服に着替えた。
そして、ショットガンについた紐を肩にかけ、メインコンピューターがある部屋につながる扉の前に、立っていた。
「じゃあ、潜入しますか!『Gift』へ、レッツゴー!」
私達は、扉を開けた。
そこにいたのは一人の人間。
黒くて、ボサボサした髪が特徴的で、力の弱そうなイメージを持たせる見た目をしていた。
目は黒く、日本人的な顔をしていた。
次の瞬間、彼の脚の筋肉が肥大化し、気づけば、彼は私の目の前に来ていた。
こいつが『Poweredー筋力増強ー』の能力sh....
『どーん』
彼のパンチで私の顎が吹っ飛んだ。
赤ちゃんのような声しか出ない。
「......!?お前ら...日本で発見された能力者か。もうアメリカまで....」
くそ、バレちゃったか。
もうこいつとの戦闘は避けられない。
「おい、『Undeadー不死ーアンデッド』、お前は今アメリカ政府から注目され始めている。条件によってはお前を匿ってやることもできる。もちろん、実験だってしない。ただ、定期的に血液や、体の一部を貰って研究させてもらうだけだ。痛いのが嫌だったら麻酔だってする。どうだ?いい話だろう?」
確かにいい話だ。
毎日ずっと実験され続けるのが嫌だったから、ここに来ているのだから、わざわざ断って、戦闘する必要はない。
だから、答えは1つ。
「本当にそれが約束できるならその話に乗ります。じゃあ、私はこの人の話に乗るけどナナは?....ナナ?
どうしたの?黙り込んで。」
私がナナの方に振り向くと彼女、は俯いたまま黙り込んでいた。
「....ずれだ....」
「え?なんて?」
ナナが、何かをボソボソ呟いているが、声が小さくてよく聞こえない。
「とんだ期待外れだ!」
顔を上げた彼女は、怒りを露わにしていた。
予想外の反応に、返す言葉が見つからない。
「いや...最初から、自分を追いかける政府に復讐するのではなく、こっそり電波塔の機械を破壊するちいう考えに至っている時点でダメだ。」
「え....なにを言っているの?」
「だから、お前は失格だって言ってるの!私は最初から、電波塔になんて興味ない。私は、自分を実験台にした政府が憎くいんだ。その為に不老不死であるお前を利用しようとした。それに加えて、私は昔、『Undeadー不死ー』の能力を持っていた。」
「そ、そんな。」
「じゃあ、またね。」
ナナはそう言うと、私に背を向けて、来た道を戻ろうとした。
しかし急に彼女の足はピタリと止まる。
「『Poweredー筋力増強ー』の能力は貰っていくか。」
彼女は振り向いて、筋力増強に向かって銃を向けた。
『どーん』
銃声がセキュリティルー厶に鳴り響く。
しかし、そこに彼はもういなかった。
彼はいつの間にかナナの背後に立っていた。
「弾丸なんて当たるわけないかー、余計欲しくなるよ、その能力。『Poweredー筋力増強ー』くん。」
一体ナナはさっきから何を言っているんだ。
「お前のその言動からして、お前の本当の能力は『Teleportationー瞬間移動ー』じゃないな?」
「せいかーい。『Teleportationー瞬間移動ー』は他人から無理矢理奪い取った能力。私の本当の能力は『Extortionー強奪ー』だよ。」
『Extortionー強奪ー』!?
能力を奪う能力ってこと!?
「そしてこれも奪った能力『Blastー爆破ー』!!」
そして彼女は、私の背後に瞬間移動した。
「スイッチオン!」
そしていきなり『Poweredー筋力増強ー』の体の一部で、小さな爆発が起きた。
「うっ.....」
い、一体なにが!?
私は、2人の戦闘についていけない。
傍観することしかできない。
「これは20年前に手に入れた能力。ちなみにこれもね、『Infernoー業火ー』、全て焼き尽くせ。」
あたりが、青白い輝きを放つ炎に包まれた。
こちらにまで熱が来る。
炎の色が青白いのは、きっと高温だからだろう。
私達が知っている赤い炎は不完全燃焼と言われている。
例えば、マッチを擦ると、赤い炎がつく。
火が燃え続けるためには酸素が必要でだ。
しかしマッチの炎は、外からしか酸素が供給されないため、不完全燃焼となってしまう。
だが、ガスコンロなどの炎は、外側と内側、両方から酸素を送っているため、完全燃焼となる。
つまり、ナナが出した炎は、かなりの高温だ。
だが、そんなにたくさんの酸素を一体どこから出しているのでだろうか。
ナナは、疲れた顔で口を開いた。
「能力には2種類あるの。この世の法則を無視しているものと、この世の法則に従っているもの。ナツキの『Undeadー不死ー』もこの世の法則を無視しているの。そして今使った『Infernoー業火ー』は、この世の法則に従っているもの。一見、なにもないところから火を出しているように見えるけど、体内の酸素とエネルギーを使って発火させ、周りの可燃性のゴミに火をつけ、さらにそれを体内の酸素を使って加熱させているだけなんだよねー。」
さっきの炎で相当酸素を消費したのか、ナナはかなり息切れていた。
そして炎が消えると、そこには焼け焦げた人間の死体があった。
私は無言で指を千切れる寸前までナイフで切った。
そして、ゆっくりと指先をナナに向けた。
「私から切り離された体は一生残る。私の指はもう少しで千切れそう。この状態でさらに指を高速で再生させれば、この指はまっすぐナナへ向かって飛んでいく。ライフルと同じくらいのスピードは出る。」
静かな時間だ続く。
「いいね!今まで協力してきた人間を簡単に殺そうとするところとか。でも、今の君じゃ私を殺すことはできないよ。」
一人の人間を殺しておいてこの笑顔。
この人には、果たして共感能力というものが、存在するのだろうか。
「じゃあまたね、ナツキちゃん。でも、流石にそれは食らいたくないから、『Friezeー凍結ー』。」
傷口が氷で塞がれた。
これでは大した威力は出ない。
彼女は私の指を氷漬けにしたあと、さっき奪った『Poweredー筋力増強ー』で天井を破壊し、どこかへ行ってしまった。
これで私も文無しだ。
体でも売ろうかな。
私はスタイルも顔も良い方だし、体を売ればお金は簡単に貯まるだろう。
いや、それよりも儲かる方法を思いついた。
私は『Friezeー凍結ー』の男、リオンがいたところまで歩いていった。
ー二十分後ー
「昨日ぶりだな。」
そこにいたのはリオンの取り巻き。
「アンタらにいい話がある。臓器を買い取ってくれるやつを紹介したら、100ドルやる。今はすぐに払うことはできないけど。」
男たちは、自分のボスが殺されたことがよほどトラウマなのか、私の言う事をすんなり聞いてくれた。
ー暗い路地裏にてー
「ほら。例の臓器だ。」
「2日で心臓を十個も手に入れるとはな。どうやって集めたんだ?」
「知らない方がいいこともあるんだぞ。」
「そうだな。」
目の前のヤクザは、臓器が入ったケースを手に取り、金を置いてどこかへ行ってしまった。
「はあ。流石に自分の胸にナイフを突き刺して心臓を取り出すのはきつかったなー。」
自分の心臓を売って大金を得た私は、近くの、割とダークなホテルで休んでいた。
....そろそろさっき回収したナナのパソコンの中身でも確認しようかな。
何か手がかりがあるかもしれないし。
パソコンを開くと、そこには衝撃的なものが映っていた。
『はーい、みなさー、こーんにーちはー。私だよ。この動画配信サービスに登場するのは初めてだけど、日本人ならほとんどの人が私を知っていると思う。『Teleportationー瞬間移動ー』の能力者、マツオカナナだよー。』
その画面には、倒れている警備員と、右手にショットガンを持っているナナの姿があった。
『今日から、私は世界征服をしようと思いまーす。そして私はまずここから攻め落としておきまーす。』
ナナの背後に映っているのはホワイトハウス。
そして、奥から警備員が走ってきている。
大体4人か5人程度だ。
『やばー。もう来てる。じゃあ、今から自分の視点を配信しておくからみてねー。』
画面はナナの視点に変わる。
『ホワイトハウス攻防戦、レッツゴー!』
ナナはライフルを向けてきた警備員に、一瞬で距離を詰めた。
『Poweredー筋力増強ー』でも使ったのだろう。
そして、残像が見えるほどのスピードで、パンチを連打し始めた。
数人の警備員を一瞬で殴り殺した。
警備員は引き金を引く時間を与えられずに瞬殺された。
だんだんとナナの能力がわかってきた。
『Friezeー凍結ー』と『Poweredー筋力増強ー』、二つともナナがとどめを刺した人間の能力だ。
つまり、能力を奪う条件は殺すことだ。
警備員を殴り殺したナナは、血で濡れたてを、リュックから出したタオルで拭き、ショットガンを手に、ゆっくりと建物へ入っていった。
窓を火であぶり、そして凍結させる。
ガラスは熱で膨張しやすく、冷やせば一瞬で体積は小さくなり、簡単にひびが入る。
ホワイトハウスは、やはりカメラが多いのか、ナナはたくさんの警備員に挟み撃ちにされ始めていた。
『よしっ!本気出すか!』
ナナは手のひらを片方の警備員達に向けた。
そして真っ赤な炎が、警備員達を骨の髄まで焼き尽くす。
そして片方の警備員を焼き殺した彼女は、はショットガンに入っている弾を全部出して、ポケットから弾を一発出し、『Blastー爆破ー』と呟いた。
なるほど、ナナがやりたいことはなんとなく分かった。
そしてその弾をショットガンに込め、警備員に銃口を向けた。
『スイッチオン!』
弾を発射すると同時にナナの目の前で爆発が起きた。
やっぱり。
爆発は、警備員を塵にした。
ナナは弾丸をショットガンに込めて、ゆっくりと内側へ歩いていった。
『侵入成功だね。あと、言い忘れていたんだけど、今回、『Teleportationー瞬間移動ー』は使わない。私はこの戦いで自分の力を示す。人間側に付くか、私に付くか。この動画を見終わったら決めてくれ。』
ナナは、警備員達の遺体を踏みつけながら廊下の奥へ歩いて行った。
靴の裏に血がついて、彼女が一歩踏み出すたびにべちゃべちゃと音が鳴る。
彼女の足音が廊下の中に響く。
ー数十分後ー
『よし、ここが大統領がいる部屋かー。じゃあ突入まで―.....』
ナナは今のところ能力とショットガン一丁だけしか使っていない。
なぜこんなにも強いのだろうか。
なにか、秘密があるのだろうか。
私はそんなことを考えながら動画を観ていた。
『さーん、にー、いーち!』
ナナはバンッと、扉を蹴り開け、銃を構えた。
そこには誰も居なかった。
ただ誰もいなくて、静かで、血で汚れていない、真っ白な部屋であった。
『あー、嵌められたかー。』
次の瞬間、大きな爆発音とともに、天井が急に崩れ、そこで映像が切れた。
爆撃だろうか。
しかしいくら能力者とはいえ、女一人にここまで徹底的にやるのか?
ナナはそこまでしないと倒せない相手で、アメリカ政府はそれを知っているのだろうか。
気になる。
世界中の政府が何かを隠しているように感じる。
私は、ゆっくりとパソコンを閉じ、椅子に座ったまま、眠りについた。
「何度言えば分かるんだ!?いくら小さくても命はみんな平等で、大切で尊いものなんだ!簡単に奪っていいものじゃない。」
「でも、人間は食べる為だけに豚を子ども頃から育て、太らせるじゃない。」
「それは生きるためだろ。お前はなんの為にその野良猫を殺したんだ?」
「猫の体の構造が気になったから。」
「それは猫を殺していい理由にはならない。」
「分かった。でも、人間はなんでロボットを命として見てないの?」
「え?」
「お父さんは昨日、テレビ見ながら言ってたじゃん。手作業よりもロボットの方が効率的なのにって。ロボットだって命じゃない?」
「....生きていないだろ。」
「でも、ロボットが生きるためではなく、何かの作業を効率的にするために作られたからじゃん。」
「つまり動いているからロボットも捉え方によってはロボットも命だって言いたいのかい?」
「うん。だからその違いは何なのかって聞いてるの。」
「そうだなー...」
.....あ。
もう朝か。
久しぶりに夢見ちゃった。
大体私が十歳くらいの時かな。
私は、だるいなーと思いながら体を起こした。
さてここからはどうしようか。
一応200万円くらいのお金が残っている。
これくらいあれば自分の首を送ることができるかな。
私はナナと同じ方法で首を運ぶことにした。
でも私は、自分の首が入った段ボールを閉じることができない。
首を切断してら、体を動かせなくなるから。
私はスラム街まで歩いていって、この前臓器を買い取ってくれる人を紹介してくれた不良達に、段ボールを閉じるように命令した。
ー翌日ー
私はショットガンを持って約束の場所で待っていた。
そして奥からコンコンと靴の音が聞こえてくる。
...よし、切るか。
私が、ショットガンに弾を込めて、引き金に指をかけると、不良達のうちの一人が口を開いた。
「テメーが『Undeadー不死ー』か。なんの迷いもなくショットガンに弾を込めるとは....なかなかクレイジーなヤツだな。」
誰だこの人は。
私の疑問をよそに、男は続ける。
「テメーはこの『Reviveー蘇生ー』の能力者である俺が、息の根を止める。」
彼はこちらをキッと睨んだ。
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