先輩のはじめて

「違います!…ただ真香先輩の善意につけ込んで、欲望を優先した自分が情けなくって、、本当にすみませんでした!!」

僕はベットを降り、床に額を擦り付けるようにして頭を下げた。

お酒を詭弁の材料にして、安全圏から今まで優しくしてくれた真香先輩を襲うだなんて最低だ。

僕は自分の欺瞞心や被害者根性に吐き気を覚えた。

こんなのただの犯罪者である。

「そんなに謝らないでって!」

「で、でも」

「21歳にもなって処女だと重いって思われるかもだし、ね?だから、全然気にしてないよ」

真香先輩は細くしなやかな手で、なだめるように僕の頭を撫でてきた。

彼女の温もり、柔らかさ、心臓の鼓動、全てがダイレクトに伝わってくる。

それはまるで幼い頃、母親から抱擁された時のような母性を感じた。

「……私の胸で甘えてる君のこと凄く可愛いなーって思ったんだよね。初めて心を開いてくれた君への愛おしさで心がポカポカして…うん、幸せだった!」

「せ、先輩」

「君はもっと人に甘えていいんだよ?私、君のこといじるのも大好きだけど、甘やかすのはも〜っと大好きだからさ」

真香先輩は慈愛に満ちた表情で強く抱きしめて来た。

先輩の乙女を感じさせる華奢な身体や豊満な胸の柔らかさが、これでもかと言うくらい伝わってくる。

絶妙な緊張と安心感が僕の心を覆い尽くした。

「…これ以上謝られたら、君は私のこと女の子として見てないのかなって、悲しくなっちゃうよ」

「わ、わかりました、、」

「ん、よろしい」

真香先輩は僕を微睡みへ導くかのように、トントンと背中をさすってくる。

社会通念や蓋然性なんてどうでもよくなってしまうような、そんな何かが胸の中で生まれた気がした。

「んへへ、私すっごく幸せ」

「…」

「耳真っ赤。ほんとに君は可愛いな」

「か、からかわないでくださいよ」

「ごめん、ごめん。でも、そういう所がすき」

それからしばらくの間、彼女の腕の中に抱かれながら時の流れを忘れていた。

気づけば、時計の針は9時47分を指している。

「…そろそろチェックアウトの時間ですね」

「ん、そうだね」

「その本当にありがとうございました」

「どういたしまして……その、さ。君がよかったらこの後うちに来ない?」

「せ、真香先輩のご自宅にですか?」

「うん、元カノさんとご両親仲良いみたいだし、帰りづらいんじゃないかなーって思って」

確かに親からは流奈との関係についてとやかく言われる気がする。

まあ、そもそも流奈は本気で僕との関係修復を求めてはいないと思うのだが。

おそらくは刹那的な反応だろう。

「だめ、かな?」

「お、お願いします」

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