元カノの鬼電
自分の格好に気づいた真香先輩は、きめ細かく艶やかな黒髪のショートヘアを揺らしながら、驚くような速さで毛布をそのしなやかな身体にまとわせた。
白く透明感のある頬は紅色に染まり、唇はモゴモゴとさせている。
「うぅ、はぁー。頭ズキズキするかも……二日酔いかな」
「だ、大丈夫ですか?」
「うん。薬飲めばすぐ良くなると思う」
二日酔いに耐えながら何とか平静を装い、お互いの安全の為、僕はベットの端へと逃げた。
「あれ、ここ何処って…確か昨日は失恋会で居酒屋に行って、ビリヤードして、ラーメン食べて、あれ?もし、かして。どうしよ…あはは」
真香先輩は少し困ったような表情で苦笑した。
その度、毛布越しにボディーラインが強調され、思わず見入ってしまう。
「もしかして意識しちゃってる..?」
「そ、そんなことは!」
「ふぅーん…?強がらなくていいのに」
「…」
「まぁ、私もドキドキしてるんだけどね」
真香先輩はこちらの反応を楽しんでいるのか、乙女と無邪気さが交差するような笑みをこちらへ向けてきた。
朝、普段バイト中しか会わない人とこうして駄弁るのは何だか不思議な感じがする。
「あはは、むくれちゃって君は可愛いな」
「からかわないでくださいー!」
ここで機知に富んだ返しを繰り出せば、男の威厳を見せつけられるのかもしれないが、生憎彼女を奪われた小心者にそんなこと出来るはずがなかった。
「ごめん、ごめん。いつもの癖でついね」
「何ですかそのくせ!…それはそうと昨日のことどこまで覚えてます?」
「居酒屋行って、その後君にビリヤード教えてもらった所までは克明に覚えてるよ」
確か昨日の17時、僕の絶望した表情で何か察した真香先輩が飲みに連れて行ってくれたのだ。
こんな社会の夾雑物すらに優しくしてくれるだなんて、本当に聖人君主である。
「えっと、お酒が周り始めた三件目のラーメン屋で君が大泣きしちゃって、そのまま彼女さんにお別れの電話したんだよね?……揉めてたみたいだけど大丈夫?」
何だか嫌な予感がし、スマホを確認してみると共通の友達から鬼電&鬼ラインが数分刻みで来ていたのだった。
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