彼女に浮気された翌日、激オモなクーデレ先輩と朝チュンしてた

はなびえ

失恋と朝チュン

 心地よい微睡みに水を差すかの如く、僕の脳内で悪夢がこだまする。

『あたしは、一生ながの いっせい君の優しい所好きだけどな』

 今思えば、笑ってしまう程にありふれた美辞麗句を並べ、当時17歳だった僕の心を射止めた彼女西園寺 流奈

 流奈の屈託のない笑みに吸い込まれ、炎暑続きだった高二の夏、僕たちは付き合い始めた。

 告白は流奈からだった。

 受験勉強の呪縛から一時的に解放された塾帰り、僕の袖をくいくいと引っ張り、人影が少ない公園の木立の下で、いじらしく想いを伝えてくれた時の事は今でも鮮明に覚えている。

 比喩表現ではなく、文字通り僕の地味で暗い人生に天変地異が起こったのだ。

 そして初めて人から求められた瞬間でもあった。

『おい、一生の彼女浮気してるぞ?』

幸せの崩壊は突然だった。

同じサークルに所属している長嶋 ながしま ゆうが血相を変えた面持ちで、とある動画を送ってきたのだ。

『優樹く〜ん!ねえ、ちゅーしよ?』

『玲奈も甘えん坊だな。ほら、こっちおいで』

ラインに添付された12秒ほどの動画では、大好きな彼女が顔も名前も知らないイケメンにキスを懇願していた。

居酒屋の喧騒に包まれながら2人は、深い深いキスを交わし合い、トロンとした目つきで見つめあっている。

僕と接する時とは全く異なる妖艶な笑みを浮かべ、絡めるようにしてイケメンの手を握っている彼女の劣情を目の当たりにし、ただただ泣く喚くことしか出来なかった。

動画の中のイケメンに勝てる自信が全くなかったからである。

自己欺瞞に吐き気を催していると、眼前に朝陽が差し込んできた。

……どうやら昨日の失恋の一幕を悪夢として見てしまっていたらしい。

二度損した気分である。

最悪な寝起きで、不貞腐れながら目を見開くと、そこはラブホテルのような場所だった。

広々とした純白の天井に、ヨーロッパ貴族の華やかさを思わせるシャンデリア。

何だか高そうな巨大な有機ELテレビとこれでもかと存在感を示してくるガラス張りのシャワールーム。

何が何だかわからず、キングサイズベットの上で困惑していると、右隣からスヤスヤとした寝息が聞こえてきた。

「ん…おはよう一生くん」

そこにはあられもない姿で僕の右腕に抱きつく新沼 真香先輩にいぬま まなかがいたのだった。


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