第21話 回想 Assault 

「皆!三人から五人で固まって!防御優先!

エリック」

「アリー!!」

「皆を指揮してください、正面を一点突破します」

「アリ―、君は?」

「私は突破口を開きます・・・先駆けます」

「俺も行く」

「ダメです、あなたは指揮してください、皆を」

「・・・」

「エリック、時間がありません、私にしかできない、

お願い、言うとおりにして」

「・・・わかった、了解しました、隊長

皆聞いたな?

隊長が先駆けたら、正面突破だ、気合い入れていくぞ!」

「「「「「はい」」」」」

「では、行きます、皆、死なないで」

私はそう言って飛び出す

両手に剣

狙うは正面

左右から敵が挟み込もうとしてくる

全身集中

時が止まる

キン、と言う音が響く無音の中、私は敵の一番弱い部分を付く

鎧の隙間

殺す必要はない

動きを封じればそれでいい

敵兵が痛みでのたうち回る

それを見て別の敵兵が恐慌をきたす

それを繰り返し、敵兵にパニックを起こす

すると正面の左右が空く

その分を埋めようと正面が薄くなる

「今だ!全員全力で正面突破!!」

後ろでエリックの叫ぶ声がする

良かった

これで突破口は開いた

後は一人でも多くの味方を無事に

そう思った瞬間

息が苦しくなった

背中が燃えるように熱い

ああ、これは銃だ

撃たれたんだ

そう理解する

「アリー!!」

友の声がする

エリック?

誰かが私を抱きかかえる

ゆらゆらと私の体が揺れる

誰かに抱き上げられて

「しっかり、しかりしろアリー」

友の声

皆は?

皆は無事?

「ああ無事だ、無事だよアリー、みんな無事だ」

良かった

ああ、一人でも多くの兵を、民を家に帰せて

私も帰りたい

早く帰りたい

大好きな人のもとへ

アーネストのもとへ

私も、早く、帰りたい

アーニー

会いたい

早く、早くあなたに会いたい

アーニー

アーニー

ああまた、この呼び方

小さい子みたいに呼ぶのをあなたは嫌うのに

気を付けるって約束したのに

ごめんねアーネスト

でも仕方ないの

あなたは私の弟だから

どうしても、弟だから

だから、私はあなたが愛しくて仕方ないのよ

あなたを抱きしめたくて仕方ないのよ

待っててアーネスト

もうすぐ帰るから

そうしたらまた、皆に嘘をついて二人きりで馬を駆けましょう

二人きりで

ねえアーネスト

そうしたら私もう少しあなたに、言えるかもしれない

私は、あなたの剣でいたい

あなたの剣でいたいの

誰よりもあなたにふさわしい剣に、私はなりたいの

もっともっと、強くなって、あなたをもっともっと守れるように

ずっとずっといつまでも、あなたと一緒でいられるように

ずっとずっといつまでも、あなたのそばにいられるように


アーネスト

アーネスト


帰りたい

帰りたい


アーネスト

あなたのそばに私は





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