第11話 王女から奴隷へ
「被告アリシア・ハミルトンに死刑を宣告する」
私に下された判決に傍聴している人たちの声が沸く
歓声だろうか
まるで夢でも見ているような気がする
どこか、他人事のような
私は25歳になった
25歳で死ぬとは思わなかった
「被告は、何か言いたいことがあるかね?」
「え?」
「被告は、何か言いたいことがあるかね?と聞いたんだよ」
裁判長らしき人が私に言う
傍聴してる人たちも、シンとする
「・・・アーネストに、会わせてください」
また、人々の声が聞こえ始める
驚き、そして嘲り
「弟に、アーネストに」
「不敬だよ、アリシア・ハミルトン」
「・・・王太子殿下に」
「もう王となられたお方だ」
「・・・そうでした、国王陛下に」
「陛下があなたに会ってくれると思いますか?」
また、嘲る声が響く
「もう死刑が決まったあなたに、陛下が会ってくれると思いますか?
会ったところで、刑の減軽が叶うとでも?」
刑の減軽?
そんなものどうでもい
「死ぬのはかまいません
でも、死ぬ前にもう一度あの子に、弟に・・・陛下に、会いたい
話ができなくてもいいです
一目で良いから、会いたい
そしたら、そのまま殺してくれてもかまいません
どうか、どうかお願いです、あの子に・・・陛下に会わせてください」
「・・・」
「お願いです、死ぬのは怖くない
でも、このままあの子に会えないまま死ぬのは嫌です
一目でいいのです
一目でいいからあの子に会わせて、会わせてください」
「・・・国王陛下と、呼びなさい」
「・・・陛下に、どうか、会わせてください
・・・それだけが、私の望みです・・・」
会えても、弟は私を忌み嫌うだろう
私がお父様を殺したときっと思っている
私が、弟を殺そうとしたと、きっと、信じている
だって一度も私に会いに来てくれなかったから
捕えられてから、一度も私に会いに来てくれなかったから
・・・・・でも、いい
私を忌み嫌っていてもいい
蔑まれてもいい
会いたい
会いたい
アーネストに、会いたい
「・・・あなたは、もともとこの国の王女だ、ハミルトン」
ハミルトンと呼ばれたくない
あの男の妻のまま死にたくない
でも、逆らわない
「はい・・・」
「あなたには、特例を与えたい」
「特例?」
「そう、あなたは死ななくて済む
生き続けることができる」
「・・・」
死刑にされない?
生きていられる?
じゃあ
じゃああの子に会える
会えるのね
会えるわきっと、生きてさえいればいつかきっと
「ただ、その場合、あなたは奴隷になる」
「・・・え?」
「あなたは、すべての身分をはく奪され、奴隷になる」
奴隷?
え?
奴隷?
この私が、奴隷?
「アリシア・ハミルトン、死刑になるか、奴隷になるかをあなたは選ばねばならない
今ここで、あなたはどちらかを選ばなければならない
死刑か、奴隷か」
奴隷
これは何の冗談だろう
私が、私が奴隷?
私が
私が
「さあ、選びなさい、アリシア・ハミルトン」
奴隷になるぐらいなら、死んだ方が
死ねば、あの子に会えない
会えないまま、死ぬ
弟に会えないまま
嫌だ
会いたい
あの子に、弟に会いたい
アーネスト
アーネスト
私は、私はあなたに会いたい
「ハミルトン」
「私は、奴隷になります、奴隷に、奴隷になります、裁判長」
涙が、溢れた
「よろしい」
涙で前が見えないまま、裁判長の声を聴く
「では、アリシア・ハミルトンのすべての地位身分をはく奪し、奴隷となるものとする
これで判決は確定した」
涙で前が見えないまま、私は私の刑が今度こそ確定したことを受け入れた
私は、奴隷になった
ただの、奴隷になった
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