千織さんご自身が「三島好き」を公言している通り、三島由紀夫のような格調高い美しさと、ストーリーの重厚性が同居している物語であったと思います。静かな物語の展開ながら、十分すぎるくらいの読後感を与えてくれますね。三島由紀夫の文体に興味がある方は、この作品にもぜひ、いちど触れてみることをおすすめしたい内容でした。ハイクオリティな作品をありがとうございました。
影とは「それ」を立体にする。2次元を3次元に表現する方法、それは影の存在。この作品を読ませていただき、『平面的ではない色』を感じさせていただきました。2次元をいくら重ねても厚みが0では3次元に成りえません。そこに厚みとも言える『匂い』がこの作品にはございました。故に絵画ではなくなった世界がそこに広がっておりました。『短編にして心に残る良作』良い作品に出合えたことに感謝しております。
端正な文章で浮かび上がる盛岡の桜、絶景、そして届く澄んだ箏の音。登場人物の人との間のとりかた、まともさがもたらすうつくしさ。微妙な若者の心の音が洩れて、伝わってきます。