第9話 『 神経痛 』
首が痛い。また寝違えたようだ。最近よく肩が凝るなと思っていたが、今度は首だ。枕を変えたのが良くなかったのかも知れない。
私は高い枕を好む。自分でも「ちょっと高いかな」と思うが、如何せんそれ位が自分としては収まりが良い。逆に普通のだと、無理に首を下ろしている感じになって落ち着かない。
肩とか首とか背中の筋とか、一度痛みが走り出すと私は3、4日は苦しむことになる。そして痛みが治まるまでは気になって仕方がない。仕事が手につかなくなるまではないが、不用意に体を動かし上半身に激痛が走るのを怖れて、どうしても動きがぎこちなくなる。表情も乏しくなる。
仕方なく私は家に帰るといつもよりゆっくり風呂に浸かる。その間は痛みもあまり気にならない。断続的に張りつめていた神経をようやく緩めることができる。いつまでもこうしていたいと思う。
昔ヘルニアから首、そして頭まで痛くなったことがある。まだ学生の頃だ。最初は少し腰を捻ったかな、ぐらいだったのが、段々と痛みが背中を這い上がってきた。最後には眩暈までしてきて、このまま半身不随になるんじゃないかとさえ思ったが、ひと月近く整形外科に通ったお陰でなんとか直すことができた。
医者か…。
私は昔から医者が嫌いだった。注射が苦手と云うのとは違う。医者からまるで物のように、或る意味容赦なく扱われるのが嫌だったのだ。だから私は医者の前に立つとほとんど身がすくんで立てなかった。むしろ彼らを目の前にすることで、私は瀕死の重傷患者となるのだ。
おそらく、そのうちこの首の痛みは癒えていくだろう。だがいずれ次の痛みが襲ってくる。それをやり過ぎたらまた次が。延々なる繰り返し。意味のないリフレイン。冗談じゃない。何の為に、そんなものと付き合う必要がある?何の為に、それを耐え続けなければならない?
すこし感情的になり過ぎてるな。私は我に帰る。たかが神経痛だ。今夜は湿布でも貼って寝よう。気休めかも知れないが、今私に必要なのは、まさにその気休めなのだ。張りつめた気持ちを束の間解きほぐす為の…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます