女...だった...のか?──2

 今の俺はとても困っている。色々あって幼馴染二人と付き合うことになったのだが…

 ……俺は人間不信、特に女性恐怖症なのだ。

 中学生の時好きだった狩野香恋かりのかれんと言う女性に浮気され、挙げ句の果て根も葉もない噂を流された。もちろん俺なんかよりあいつの方が人気だったので俺の言い分なんてまったく聞いてくれなかった。…でもその時唯一助けてくれたのが、俺の今の悩みの種である、佐奈と奏と親友である福島勇姿ふくやまゆうしだ。この3人がいなかったらほんとに自殺していたかもしれないので、この3人には一生かけても返せない貸しがある。

 ……だとしてもだ。急に二人が女になったからって嫌うわけではないが、今までとは少し違うだろうな。気持ちでは二人のことを女性だとしても容認してても、頭が警告音をずっと鳴らしていて今までよりも話しにくくなったと思う。


「おい」


 そういいながら頭の上を教科書を叩いてきたのは…


「いたっ。…って勇姿じゃん」


 俺の親友であり、俺が困ってる時になにかと助けてくれるいいやつ、福島勇姿だ。


「そんなに思い詰まったような顔して、なんかあったのか?

 俺でいいなら話聞くぞ」

「いや、大丈夫だ。これは俺一人で解決するから」


 そうだ。俺と二人の問題は俺の一方的な問題なのだから、俺一人で解決するべきだ。…特に女性恐怖症の件はな。


「そうやっていつも自分一人で抱え込んで、今はわたしたちがいるんだから相談してくださいよ」

「お、奏かそれと…横にいるのは佐奈だな」


 この四人はよくいっしょにいるのはクラスでは有名だ。なんでかは知らん。


「というか佐奈と奏」

「なんだ、勇姿」

「なんだか秋が思い詰まってる感じなんだが、なんか最近あったか?

 ほら俺最近は秋の家行けてなかったじゃん」


 確かに最近はバイトが忙しいかなんかで来てなかったな。


「うーん…しいていうならわたしたち二人と付き合うようなったってことくらいじゃね」

「……は?」

「おいなに言って…」


 なんでそんな当たり前みたいに言ってるんだよ。お前破廉恥すぎんか!後、言う順序ってもんがあるだろ!


「そうですね。悪いことは特になかったですが出来事でいうならそれですね」

「えっと……いつから?」

「昨日からだ。わたしたちから告白した」


 …別にそこまで言わなくてもよかったのでは?


「(おい!もしかしてだけど…お前BLとか同性愛が好きなのか…?いや別に否定はしないぞ。みんなはどうかわからないけど俺はそれだからってきらったりしな…)」

「なわけないやろ!…まあ落ち着いて聞いてくれ、こいつら…佐奈と奏は女なんだ」

「……Why?」


 まあそうなるわな。俺も最初聞いた時そんな感じだったもん。信じらんないよな。わかるぞ、その気持ち。


「ということは今からこの四人は男子四人のグループじゃなくて、男子二人女子二人のグループになるってことなのか?」

「そうにきまってるだろ。まあ、詳しい話は後で話すからさ」

「というか結構周りが騒がしくなってますよ。あなたたちが大声で話しているから」


 いや俺関係ないだろ。その”たち”のなかに俺をいれないでもらいたい。


『え?秋野さんと冬樹さんって女の子だったの?』

『わたし普通に異性として好きだったんだけど、…終わっちゃった…わたしの初恋』

『なわけないなわけないなわけないなわけないこんなのあっていいわけない』


 ……と、三者三様のこたえが聞こえる。…初恋の件はまじでごめんよ。いやガチでごめんって。


「おいみんな席に着けー」


 ナイス先生!先生がそういうとみんな各自の席についた。


                ◇◇◇


 四限までの授業が終わると昼休みだ。俺は自分で弁当をつくってるのでそれを持って屋上へ向かった。いつもは四人と教室で食べるのだが、ちょっと今日はひとりで食べたかった。

 でもそんな俺の期待を裏切るように、屋上には先客がいた。


「…やっほ。夏」

「おー、お兄じゃん。珍しいねこんなとこに来るなんて」

「まあ、ちょっと一人になりたくね」


 こいつは俺の3個下で、高校一年生の神川夏かみかわなつだ。女性恐怖症の適用外のひとりだ。もちろん妹なのだが、俺が言うのもなんだが……かなりのブラコンだ。普通にスタイルも声も顔もいいし、性格もいいんだから、そろそろなあ…と思っている。……これは客観的意見であって、俺の意見ではないからな。高校一年生というのに、時々抱きついてくる。そろそろ俺の理性がやばいからやめてほしい。


「へー……もしかして告られた?」

「……そうだ」

「え?だれに?もしかして…」

「佐奈と奏だ」

「…またまたー、冗談でしょ。だってあの二人は男でしょ」

「あの二人は女だ。冗談じゃない」

「………」


 しっかり見つめて言ってやった。というか夏は結構察しが良いのだ。現に悩みがあってそれが告白のせいだとバレている。超越者エスパーかよ。


「…で、どうするの」

「……付き合うことになったよ」

「へえ……そうなんだ。そうなんだぁ……ふーん…」

「……おい、な…つ?」


 ドサッ。


 急に夏が押し倒してきた。胸元に顔が埋まっている。離れようとしても離れらない。


「おいなにやって…」

「…わたしずっと好きだったんだよ。妹と兄の関係だから付き合えないのはわかってる。でも湧き出る感情を抑えきれなくて、…こんなんになったのはお兄のせいなんだよ。なのにその責任を全く取らないで…責任とってよ」

「っ……。ごめん」


 なにもわからなかった。でも謝らないと今の関係が崩れてしまう気がした。


「今後なにかしたりなにかあったらすぐに言って。約束だから」

「あ、ああ。約束だ。今後はちゃんと言うよ」

「…約束だよ」

「ああ、約束するよ」

「……というかそろそろどいてくれない?」

「…色々当たってるし、顔も近すぎるから…」

「っ………。ごめんっ」


 そう言って夏は急いで屋上を出た。実際色々限界だったのは本当だ。

 …どうしよう、実の妹から告白された。


 そう思いながら俺は弁当の卵焼きを一口で食べた。



             ◇◇◇


(夏視点)



 やばいやばいやばいやばいやばい。とりあえず屋上からは出た。

 ……実の兄に告白した上、”責任とってよ”とかいうヤバイ女みたいな言葉も言ってしまった。

 いや元はいえばいつもわたしに優しくて、支えてくれて、助けてくれるお兄が悪いのだ。……いや、いつ考えてもいい兄すぎる。というかお兄にも彼女できたんだな…。

 嫉妬なんてダメだってわかってる。ダメだってわかってるのにしてしまう。


 そんな時屋上への階段を登る音が聞こえてきた。


「あれ、どうしたん?」


 ──五分後


「へぇ、そうなんやね」


 きていたのは秋野佐奈さんだった。お兄の彼女の人。


「ということはあなたはわたしたちに嫉妬してるってことかな?」

「え?」


 え?なんでバレた?私の名前は伏せたし、”兄のこと”としか言っていない。嫉妬してるとも言ってない。バレた要因がわからない。


「その感じだと図星だったみたいだな」

「あなた神川秋の妹、神川夏ね」

「っ………」

「あなたの話は秋からよく聞くから、その特徴と似てたからだよ。」

「…はい…その通りです…」


 ちょっと凄いというか、怖くてつい敬語になってしまった。これ以上隠してもどうせバレると思ったので、正直に答えた。


「お兄ちゃんのこと好きなんでしょ」

「はい!世界で一番といえるほど」


 …やべ、つい大声で言ってしまった。この人はお兄の彼女なのに……。


「そう、夏ちゃんがどんだけ秋のこと好きでも別にいいんだけど、これだけは言っておくわ。……絶対負けないから」


 すごい気迫……。ほんとにお兄のこと想ってることがよくわかる。

 ……でも、お兄への想いは負けない自信がある。


「望むところです!秋野先輩」

「…そう、それじゃ、またいつか」

「はい!またいつか」


 …絶対負けない、早速今度買い物に誘って、先制攻撃だ。大事なことだからもう一度言う、絶対負けない。


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 あとがき



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2025年1月9日 20:00 毎日 20:00

男だと思っていた美少年or美少女の幼馴染二人に告白されたんだか? カフェオレ @cafe772

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