第29話 グランド領の屯田兵の日常  4

★☆ 仲間たちと新たな戦いへ


リオンの傷はすっかり癒え、平和な日常が戻ってきていた。朝日が差し込む中、畑で鍬を振るうリオンの元に、息を切らせた少年が駆け寄ってきた。


「リオンさん!隣村が魔物に襲われてるって……!応援を頼むって!」


リオンは鍬を置き、少年を真剣な目で見つめた。

「状況は?どんな魔物が来てる?」


「詳しくはわからないけど、大型の群れだって……村の人たちが防ぎきれないみたいで!」


リオンはうなずき、少年の肩を軽く叩いた。

「わかった、すぐに行く。お前は他の人に知らせて、村を守る準備をさせろ。」


---


★☆ 仲間たちとの合流


リオンは装備を整え、屯田兵の仲間たちが集まる広場に急行した。すでに何人かの仲間が武器を手に集まっている。


「リオン、やっぱりお前も来ると思ったぜ!」

そう声をかけてきたのは屈強な体つきのフランだった。


「当然だろ。この村だけじゃなく、周りの村だって守らなきゃ、俺たちの生活も続かねえんだから。」


仲間たちはその言葉にうなずき、それぞれ準備を進める。新米の若い兵士も不安そうにしながら、リオンに問いかける。

「大丈夫でしょうか……?俺、まだ大した戦績もなくて……。」


リオンは彼の肩に手を置き、落ち着いた声で言った。

「俺だって最初はそうだった。でも、みんなで力を合わせりゃ、どんな魔物だって乗り越えられる。信じろ、自分を。そして、仲間を。」


---


★☆ 隣村への道中


村から隣村への道は山を抜ける険しい道だ。リオンたちは隊列を組みながら、緊張感を持って進む。道中、フランがリオンに近づき、小声で話しかけた。


「なあリオン、最近、魔物の襲撃が多くねえか?」

「ああ、俺もそれを感じてる。どこかで増えてるのか、森が荒れてるのか……原因はわからねえが、気を抜けないな。」


遠くから悲鳴が聞こえる。隣村が見える場所までたどり着いたリオンたちは、そこに魔物の群れが押し寄せているのを目撃した。


「行くぞ!」


---


★☆ 戦闘


リオンたちは全力で駆け下り、魔物の群れに突撃した。村人たちが必死に防戦している場所にたどり着くと、リオンは声を張り上げる。

「俺たちが来た!防御線を固めろ!」


巨大なオーガが村の門を破壊しようとしている。リオンは槍を構え、全力で突撃した。


「お前なんかに、村を壊させるわけにはいかねえ!」


仲間たちもそれぞれの武器を手に魔物を迎え撃つ。弓を引く者、剣を振る者、盾を掲げて村人を守る者。全員が自分の役割を全うし、村の防衛線を支えた。


リオンは敵の隙を突き、オーガの膝を狙い、突き刺す。オーガが崩れ落ちると、仲間たちが一斉にとどめを刺した。


---


★☆ 援軍到着


激しい戦闘が続く中、ようやく騎士団と近隣の村からの援軍が到着した。銀色の甲冑を輝かせた騎士たち「ケシカランぞーーー」が突撃し、魔物の群れを一掃していく。


リオンは息を切らしながら仲間に声をかける。

「援軍だ!これで押し返せる!」


村は見事に守り抜かれた。魔物の群れは壊滅し、村人たちは歓声を上げて喜んだ。


---


★☆ 戦いの後


リオンは肩に傷を負いながらも、仲間とともに村の片づけを手伝っていた。そこへ妻のマリアが駆けつけ、彼を抱きしめた。


「リオン、無事でよかった……。」


リオンは少し照れくさそうに微笑む。

「こんなことで倒れるわけにはいかねえよ。お前との生活を守るためにもな。」


マリアはリオンの傷を見つけ、再び彼を叱る。

「ちゃんと休んで。今度は私が看病する番だからね。」


リオンは彼女の手を握り、静かにうなずいた。

(俺たちがこうして支え合う限り、この村は絶対に守っていける。)


村の空に広がる夕日を見上げながら、リオンは新たな決意を胸に抱いたのだった。



★☆ リオンの家での一幕


戦いから一夜明けた朝、リオンは腕に包帯を巻いたまま、ゆっくりと寝台から起き上がろうとした。激痛が体を襲い、顔をしかめる。


「くそっ、こんなことでへたばるわけにはいかねえ……。」


リオンは傷ついた体を押して仕事に向かおうと立ち上がるが、その瞬間、優しいが鋭い声が飛んできた。


「ダメよ!」


奥の部屋から現れたのは妻のマリアだった。彼女は手に布を持ちながら、眉をしかめてリオンを睨みつける。


「動いちゃダメって言ったでしょ。まだ安静にしていなきゃ。」


リオンは少しバツが悪そうに頭を掻いた。

「でも、仕事をサボるわけにはいかねえだろ。みんなだって昨日の戦いで疲れてるんだ。俺が休んでどうする。」


マリアはため息をつきながら、リオンの腕を掴み、強引に寝台に押し戻した。


「あなた、こんな状態で働いて、村の人に心配かける気?それとも、倒れてみんなに余計な迷惑をかけるつもりなの?」


リオンは言葉に詰まりながらも反論を試みる。

「いや、それはそうだけど……俺だって一家の大黒柱だしな。」


マリアはそんなリオンの頬を優しく撫で、微笑んだ。

「大黒柱なら、しっかり治して元気でいることが一番の仕事よ。あなたが倒れたら、私や村の人がどれだけ悲しむかわかる?」


その言葉に、リオンはハッとし、ようやく観念して寝台に腰を下ろした。


「……お前には敵わねえな。わかったよ、今日はゆっくりする。」


「そうそう、最初からそう言えばいいのよ。」


---


★☆ 家庭の温かさ


マリアは暖かなスープの入った椀を持ってきて、リオンに差し出した。

「ほら、これでも飲んで元気をつけて。お肉をたっぷりにしておいたわ。」


リオンはスープをすすり、ほっとした表情を浮かべる。

「お前のスープは本当にうまいな……。昨日の戦いの疲れが吹き飛ぶ気がするよ。」


マリアは微笑みながら、リオンの隣に腰掛ける。

「昨日は本当に頑張ったわね。村のみんなが感謝してたわ。あなたのおかげで家も家族も守れたって。」


リオンは少し照れくさそうに頭を掻いた。

「……俺だけじゃねえよ。みんなが力を合わせて戦ったからこそ、村を守れたんだ。」


マリアはリオンの手をそっと握りしめる。

「でもね、私はあなたが無事で本当に嬉しいの。だから、どうか無理はしないで。」


---


★☆ 平和な日常


その後、マリアが家事をする横でリオンは素直に寝台で横になっていた。


リオンは窓の外を眺めながらつぶやく。

「平和ってのは、こうやってのんびり過ごす時間のことだな……。」


マリアは振り返って微笑む。

「そうね。でもその平和を守れるのは、あなたたちが頑張ってくれているからよ。」


リオンは妻のその言葉に心から感謝し、静かに目を閉じる。戦いを終えた体には、家庭の温かさが何よりも沁み渡っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る