第28話 グランド領の屯田兵の日常 3
★☆ 村を守る戦い
まだ陽が昇りきらない早朝、リオンは異様な雰囲気に目を覚ました。空気が張り詰め、遠くから村の見張りが吹く警笛の音が耳に届く。
「魔物だ!」
声が村中に響き渡り、人々が慌ただしく動き出す。リオンはすぐに寝床から跳ね起き、剣を手に取ると屯田兵の集合場所へ急いだ。
「リオンさん!」
見張り台から降りてきた若い仲間が息を切らせながら駆け寄る。
「数は……かなり多いです!恐らく闇ノ森から出てきた群れかと……!」
リオンは険しい顔で頷き、周囲を見回す。屯田兵たちはすでに持ち場に付き始めていたが、村を守る兵力は十分ではない。
「近隣の村や騎士団に援軍を頼め!」
リオンは見張りに指示を飛ばす。
「ここは時間を稼ぐしかない。全員、準備しろ!村の人々が避難するまで絶対に持ちこたえるんだ!」
★☆ 魔物との激突
まもなく、村の外れに不気味な影が現れた。森から流れ出すように現れたのは、牙を剥く巨大なオオカミ型の魔物や、奇怪な形をした虫型の魔物たち。数は数十匹にのぼる。
「来るぞ!」
リオンの声が響き、屯田兵たちは盾を構え、槍を突き出して迎撃態勢を取った。
最初の一撃は凄まじかった。巨大なオオカミ型の魔物が突進してきて、兵士の盾ごと吹き飛ばす。しかし、リオンは動じない。
「怯むな!狙いは足だ!」
剣を振りかざし、リオンは真っ先に魔物の足元を狙って切り込む。鋭い一撃が魔物の脚を切り裂き、その巨体が地面に崩れ落ちた。
「リオンさん!」
隣にいた若い兵士が叫ぶ。虫型の魔物がリオンの背後から襲いかかろうとしていた。
リオンは咄嗟に身をひねり、剣を振り下ろす。しかし、その一撃だけでは仕留めきれない。虫型の硬い外骨格が剣を弾き返す。
「ぐっ……!」
再び剣を振り上げようとするリオンを仲間が援護する。槍が飛び、魔物の動きを止めると、リオンがとどめを刺した。
「よくやった!」
仲間に声をかけつつ、リオンは次々と迫りくる魔物に立ち向かう。
★☆ 苦戦の中の希望
戦いは激しさを増し、屯田兵たちの疲労も見え始めていた。リオンの腕にも傷が増え、体力も限界に近い。それでも彼は立ち止まらない。
「リオンさん、もう無理です……!」
若い兵士が涙ながらに訴えるが、リオンは首を振った。
「村を守るんだ。あと少しだ……援軍は必ず来る!」
その言葉を裏付けるように、遠くから騎士団の旗が見えた。さらに、近隣の村から駆けつけた人々も武器を持って集まってくる。
★☆ 騎士団たちの到着
騎士ケシランは部下と馬でかけていた。自分の担当区の村の一つで魔物が襲撃されたことをグランド子爵の魔法で知ったのだ。遠音という魔法で、遠くから魔法を声の魔法を届ける一般魔法であるが、われらが主君はそれを超規格外なレベルで使いこなうことができる。
その尊敬する主君からの命令で、ケシランは馬をかけていた。
「けしからん!けしからんぞ!某の担当区で魔物に襲撃されるなどと!」
村に到着したら、狼型の魔物たちが村の策を乗り越えようとしている。それは魔法の矢で叩き落した。
「騎士諸君!けしからん魔族どもを一掃するぞ!」
★☆ 援軍到着と勝利
騎士団の突撃が戦況を一気に変えた。組織的な動きで魔物たちを追い詰め、次々と仕留めていく。リオンも再び剣を握りしめ、援軍とともに最後の反撃に加わる。
数十分後、魔物たちは完全に壊滅した。
★☆ 戦いの後
戦いが終わり、リオンは剣を杖代わりにしながら地面に膝をついた。肩や腕から血が流れていたが、命に別状はない。
「リオンさん!」
仲間たちが駆け寄ってくる。
「村は……村は守れたか?」
リオンは息を切らしながら問いかける。
「はい!皆、無事です!」
その言葉に、リオンは大きく息をついた。
「……そうか、それならいい。」
彼はふと空を見上げた。
(グランド子爵様、この領地の平和は守りましたよ……。)
微笑むリオンの姿を見て、仲間たちは彼を誇りに思い、改めて村を守る決意を新たにするのだった。
★☆ 村に届いた褒美
リオンが村の広場で作業をしていると、大きな荷車が村に入ってくるのが見えた。荷車にはグランド子爵家の紋章が刻まれており、近づくにつれて村人たちのざわめきが広がった。
荷車から降りた騎士ケシランが村長に書状を手渡し、リオンたち屯田兵の名前を呼び上げた。
騎士ケシラン、屯田兵からすると圧倒的な強さを誇る騎士だった。
態度がデカいが口癖の「ケシカラン」が愛嬌のあるのが特徴であった。
とにかく村が危機になるとすぐに駆け付けてくれるため、村人から非常に尊敬されていた。ただし、態度がデカい。
「これは、先日の魔物撃退の働きを称えたグランド子爵様からの感状と金一封でござる。」
騎士ケシランが声高らかに告げると、村人たちは一斉に拍手を送り、リオンたちを祝福した。
感状とともに大量の酒樽が荷車から降ろされる。見るからに安酒であるが、大量な量であり、村人たちはさらに沸き立った。
「ああ、そうだリオン。妻をめとるらしいな。それならば、宿舎暮らしはきついだろう。夫婦用の長屋があったはずだ。そちらに移るといい。あと、耕地も夫婦になったから増やしてやらないとな」
これだ、これがあるからどうしてもこの騎士を嫌いになれないところなのだ。この騎士様は住民一人一人のことを覚えている。リオンの記憶している騎士は村人など人間扱いなどしない。勝手にやってきては税を搾取するだけの存在であった。だが、この騎士は違う。とにかく態度がデカいが。
「そのようなことを決めてよろしいのですか?」
「何だ?某の決定に不服でも?ケシカラン。某が責任を取るから黙って従え!」
★☆ ささやかな祭りの準備
その日の夕方、広場には即席の宴会場が設けられた。屯田兵とその家族、村人たちが総出で準備に取り掛かり、あっという間に賑やかな空間が出来上がった。
リオンの妻マリアもせっせと料理を作り、リオンに声をかける。
「今日はあなたが主役なんだから、しっかり楽しむのよ。」
リオンは少し照れながら答えた。
「俺だけの働きじゃないさ。みんながいたからこそ、村を守れたんだ。」
広場には焼き立てのパンや新鮮な野菜料理、魔物の肉を使ったシチューなどが並べられ、酒樽が次々に開けられていく。
★☆ 宴会の始まり
日が沈むと同時に、宴会が始まった。
リオンが感状を高く掲げて、仲間たちに声をかける。
「この村を守れたのは、みんなのおかげだ。グランド子爵様に感謝しつつ、今日という日を楽しもう!」
仲間たちは一斉に歓声を上げ、乾杯の声が響き渡った。
★☆ 村人たちの風景
屯田兵たちは酒を酌み交わしながら、戦いの話で盛り上がった。
「あの時のお前の一撃、見事だったな!」
「いやいや、最後に追い詰めたのはリオンだろ!」
リオンは苦笑しながら答える。
「みんなで力を合わせた結果さ。誰か一人が欠けてたら、こうはならなかった。」
一方で、子供たちは広場を走り回り、笑い声を上げていた。村の女性たちは集まって料理を振る舞い、時折夫や子供たちに声をかける。その光景は、どこか穏やかで幸福に満ちていた。
★☆ 感謝の言葉
宴もたけなわになる頃、リオンは酔った勢いで感情を抑えきれなくなった。
「俺たちがこうして村を守れたのは、グランド伯爵様のおかげだ。あの方がいなければ、俺たち屯田兵も、村も、どうなっていたか分からない……。」
他の屯田兵たちも感謝の言葉を続ける。
「あの制度があったから、俺たちは家を持ち、村を守る力をつけられたんだ。」
「子爵様に誓うよ。この村と家族を、これからも命を懸けて守るってな!」
★☆ 祭りの余韻
夜が更けると、徐々に人々は家路に着き始めた。
リオンはマリアと肩を並べながら、星空を見上げた。
「楽しかったね。」
「ああ、本当に……こういう日があるから、また頑張れるよ。」
村の風は冷たく心地よく、リオンはこの平和を守り続けることを強く胸に誓うのだった。
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