第25話 内政 屯田兵制度

★☆ 屯田制の説明と議論


アニーがセバスの報告に耳を傾けている中、ふと顔を上げて口を開いた。

「ねえ、さっき言ってた屯田兵って何?」

その素朴な質問にオレは微笑を浮かべ、資料をセバスから受け取って説明を始めた。


「屯田兵というのは、平時には農業をして生計を立て、戦時には兵士として戦う者たちのことだ。」

「ふーん。でも、それって普通の兵士とどう違うの?」

アニーが首をかしげると、オレはさらに具体的に話を続けた。




★☆ 屯田制の仕組み


「普通の兵士は、領主が全額の給料や食事を支給する。それが軍事費として領地の財政を圧迫するんだ。でも、屯田兵は与えられた土地で農業をして自分の生活を賄うから、兵士を増やしても領地の負担が少ない。グランド家では目標として2万人の兵士を常備するようにしているため、財政の圧迫が大きい」


「農業しながら戦うなんて、大変じゃないの?」

アニーの疑問に、オレは頷きながら答えた。


「確かに負担は大きい。でも、土地を与えられることで、引退後も農業で生計を立てられるメリットがある。これで、兵士が引退した後の生活保障にもなるんだ。彼らの任期は5年から10年程度だからな。5年頑張れば土地を貰えると思えば、お得感あるだろう。」

オレは続ける。

「それに引退後もイザとなったら兵士として戦える。引退後は兵士としての義務はないが、自分の村が魔物に襲われたら、誰だって戦うだろう。屯田兵制度は村々の防衛力向上に役に立っている」




★☆ 成果を示すセバスの報告


セバスが追加の資料を手にして口を挟んだ。

「実際、この制度のおかげで、領内の農業生産量は増加しております。新しい灌漑システムと併用することで、屯田兵による開墾地も急速に成果を上げております。」

「うわ、本当に効果が出てるんだね。でも、その人たちが戦うとき、畑とかどうするの?」


アニーが真剣な表情で尋ねると、オレは少しだけ苦笑した。


「もちろん、畑が荒れるリスクはある。だから、屯田兵にはできるだけ頼らず、騎士団も併用している。緊急時にすべてを担わせるわけじゃない。」


セバスがさらに補足する。

「また、屯田兵には領地の防衛や治安維持など、比較的近場の任務を優先して割り当てています。遠征などには、騎士団を派遣するようにしております。」




★☆ アニーの率直な感想


アニーは少し考え込んだ後、小さく感嘆の声を漏らした。

「うーん、なんかいい感じね。農業もできて、戦いもできて。それにしても、農業とか魔法とか、うまく全部を組み合わせてる感じ。」


オレは静かに頷いた。

「この制度は地球の歴史からヒントを得たものだ。紀元前の時代に成功した例があったから、魔法の力を使えばもっと効率よくいけると思ったんだ。」


アニーが少し驚いた顔をしてオレを見つめる。

「意外と考えてるのね、あんた。」

「何を言ってる。常に考えてるさ。」


セバスが控えめに笑いながら、書類をまとめた。

「ご主人様、この制度が成功しているのも、すべてご主人様の的確な指示のおかげです。」


オレは軽く手を振りながら答える。

「領地の未来を考えたら、こういう工夫は必要だというだけだよ。」


アニーは興味津々な表情を浮かべたまま、窓の外を見た。

「そういうの、もっと早く教えてくれればよかったのに。」

オレは微笑を浮かべながら答えた。

「これから何でも教えてやるよ。興味を持つのはいいことだ。」

★☆ オレの決意


アニーが腕を組みながら考え込む。

「ふーん、じゃあ結構順調ってことね。でもさ、これからもっといろいろ増えたらどうするの?」


オレは窓の外を見ながら静かに答えた。

「それを考えるのが俺たちの仕事だ。領地が成長するほど、守らなければいけないものも増える。それに、挑戦し続けなければ、繁栄は続かない。」


アニーが少し照れたように笑う。

「あんた、たまにはいいこと言うのね。」


オレは苦笑しながら、セバスに目を向けた。

「セバス、これからも頼む。」

セバスは深く頭を下げた。

「お任せください、ロード様。」

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