第23話 領地の守護者となる石像
★☆ 領地の守護者となる石像
グランド邸の広々とした執務室で、オレはセバスと対面していた。目の前の書類には、各地に設置予定の石像の進捗状況が詳細に記されている。オレの目は鋭く、内容を確認している。
「セバス、進捗状況だが、予定より遅れているようだな。」
オレの静かな声が室内に響く。
セバスは深く頭を下げ、すぐに答えた。
「申し訳ございません、ご主人様。職人たちを増員し、遅れを取り戻すべく努力しております。近日中には進捗を元に戻す予定でございます。」
オレは書類を机に置き、セバスの言葉に頷いた。
「それならいいが、これは急務だ。石像の設置は単なる飾りではない。この領地を守るための重要な基盤になる。」
★☆ アニーの文句
オレとセバスの会話を横で聞いていたアニーが、少し不満げな顔で口を挟んだ。
「石像をあちこちに置くなんて、貴族の悪趣味じゃないの?誰もそんなの見たくないよ。」
オレはアニーに視線を向け、冷静に答える。
「アニー、この石像が何のためにあるか、分かっていないようだな。」
アニーは腕を組み、小さな体を反らせながら反論する。
「だって、どうせ自己満足でしょ?『ああ、グランド子爵様は偉大だ』とか、そんな風に見せたいんじゃないの?」
セバスがその言葉に反応しようとしたが、オレが手を上げて制した。
★☆ 石像の本当の目的
オレは椅子に深く座り直し、落ち着いた口調で説明を始めた。
「この石像は広範囲探索魔法を補完するためのものだ。一つ一つに、俺の血を一滴垂らしている。それにより、この石像は俺の能力を持続的に拡散させることができる。」
アニーが目を丸くする。
「え?血?それって…どういうこと?」
オレは机の上の地図を指差しながら続けた。
「広範囲魔法を使えば、俺は領地全体を常に監視できる。しかし、俺がここにいる限り、その範囲は限られる。だが、石像を各地に設置することで、俺の魔法がその範囲を超えて作用するようになる。」
セバスが補足する。
「石像の効果は最大で3年間持続します。その間、領地内の異変や災害、敵の侵入を察知することが可能になるのです。」
アニーは少し考え込んだ様子を見せたが、すぐに鼻を鳴らした。
「うーん、でもそれなら、もっと見た目を可愛くするとかさ。だいたい、血を使うなんて怖いし。」
オレは思わず苦笑した。
「石像は本人に生き写しでないと効果が十分に発揮しない。可愛い彫刻を並べておくなど論外だ。」
だから、石像はオレにそっくりに作ってある。通常、石像なんて本人よりも美形にすることが普通であるが、それをしては意味がない。
オレが成長し、身長が伸びたり、太ったりしてもダメなのだ。極端な話、髪型の変更もある程度抑える必要がある。服装はどうでもいい。
アニーは小さく頬を膨らませ、まるで子供が親に叱られた後のような顔をした。
「まぁ、分かったよ。でも、ロードの顔の石像ってのが一番の悪趣味だからね!」
★☆ セバスの決意
セバスはそんなやり取りを横で聞きながら、オレに向き直り、深々と頭を下げた。
「ご主人様、石像の設置は私の責任において必ず完遂いたします。この領地を守るため、私も全力を尽くします。」
オレはセバスの目をじっと見つめ、静かに頷いた。
「頼む。これが完成すれば、俺が領地を離れても問題ないほどの防衛網ができる。」
アニーはそんな真剣な二人の会話を聞きながら、小声で呟いた。
「なんだかんだ言って、あんたたち本気なんだね。」
オレは微かに笑みを浮かべ、アニーに視線を向けた。
「当然だ。この領地の住民を守るのが俺の役目だからな。」
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