悪役令嬢とある貴族の物語 ~ しがない貴族ですがお嬢様は私が守ります。ついでに、ヒロイン全員をNTRます。

第19話 粛正

★☆ 裁判の幕開け

広間には、オレと悪徳役人、そして関係者たちが集まっていた。

オレは裁判の場に立ちながら、冷静な表情で役人を見下ろしていた。役人は鎖に繋がれ、周囲の視線を浴びていたが、その態度は傲慢そのものだった。

「これが領主様のやり方ですか？」

悪徳役人は嘲笑を浮かべながら声を張り上げる。

「私を泳がせ、他の者を巻き込むために利用しただけだとは！」

広間にざわめきが広がる。オレは一瞬の間を置き、ゆっくりと答えた。

「その通りだ。」

オレの声は静かだが、その響きには一切の迷いがなかった。

「貴様の悪事を見逃したのは、ただ単に泳がせた方が多くの悪党を捕らえられると判断したからだ。」

★☆ 悪徳役人の反論

役人は顔を真っ赤にして声を荒げる。

「私はお前に忠誠を誓っていた！いや、この領地のために働いてきたのだ！私がいなければ、何も成り立たなかったはずだ！」

オレは腕を組み、冷たい視線を向ける。

「忠誠？働いてきた？その言葉を、この領地で苦しめられた人々の前で言えるか？」

オレの広範囲探索魔法で集められた証拠が次々と提示される。

不正に徴収された税金、ねつ造された書類、私腹を肥やすための資産隠し――すべてが明白に示される。

★☆ 開き直るオレ

役人は震えながらも口を開く。

「お前だって同じだろう！私を利用し、もっと大きな成果を得るために見逃したじゃないか！」

彼の言葉には怒りと絶望が混じっていた。

オレはその言葉を聞いて微かに笑みを浮かべた。

「その通りだ。」

彼は一歩前に出る。

「領地のためならば、貴様に悪事を続けさせることも許容した。それが効率的だったからだ。お前が仲間を誘ってくれたおかげで馬鹿どもを芋づる式で捕えることができた。感謝するぞ」

役人はその冷淡な返答に愕然とする。

「領地をよくすることが最優先だ。誰が何を言おうと、この方針は変わらない。」

オレの声には冷酷ささえ感じられたが、その背後には領地を守る責任感が見え隠れしていた。

★☆ 最後の裁き

役人はとうとう崩れ落ちた。膝をつき、力なく呟く。

「お前は冷酷な領主だ……。」

オレは冷たく見下ろしながら言葉を続ける。

「貴様が苦しんでいるのは自業自得だ。領地を裏切り、住民を苦しめた罰を受けるだけだ。」

彼の言葉に合わせて、広間の裁定官が最後の判決を下す。

「被告、死罪。」

役人は絶叫したが、それが彼の最後の声となった。

★☆ 周囲の反応

裁判が終わり、広間を去るオレを見送る人々の中には、恐怖と敬意が入り混じった表情があった。

オレは一切の感情を表に出さず、広間を後にしたが、その胸には冷たく重いものがあった。

（領地がよくなるためなら、どれほど非情になろうとも仕方がない。だが、それでも……。）

彼の覚悟を見た家臣たちの間にも、改めて彼の指導力と恐ろしさが印象付けられる裁判であった。

★☆ 処刑の後の歓声

処刑台には悪徳役人たちの首が吊るされていた。その顔は苦悶に歪み、生前の罪深さを象徴しているかのようだった。広場には人々の歓声が響き渡り、住民たちは涙を流しながら喜びの声を上げていた。

「これでようやく平和が戻る！」

「私たちの税金を盗む悪党どもが裁かれた！」

オレはその場にはいない。それでも、処刑を命じた彼の存在はこの広場を支配していた。

★☆ 恐怖に震える役人たち

広場の片隅にひっそりと立つ数人の役人たち。彼らは顔をこわばらせ、処刑台を凝視していた。

「次は……俺たちかもしれない……。」

一人が呟いた言葉に、全員が小さくうなずく。

「いや、俺たちはまだ大丈夫だ。俺たちのような小悪党は見逃されるはずだ。それに、多分、証拠は残っていないはずだ……。」

もう一人が震えながら否定するものの、その声には自信がなかった。

誰もが自分たちの首が次に晒される可能性を想像し、手に持った小さな袋や書類に視線を落とす。それらは不正の証拠――今や命取りになりかねないものだった。

★☆ 魔法の声

突然、空気が静まり返った。まるで広場全体がオレの視線に捕らえられたかのような感覚だった。次の瞬間、澄んだ、しかし冷徹な声が響く。

「すべてを見ている。」

役人たちは一斉に顔を上げ、あたりを見回す。しかし、声の主はどこにもいない。それでも、その声は確かに彼らに語り掛けていた。

「私の広域探索魔法の前に、不正は一切隠せない。何をしたか、どこでそれを行ったか――すべてを把握している。」

その場にいた役人たちの顔が蒼白になる。

「今日の処刑が示す通り、私の領地では不正は許されない。」

「善良であれ。働け。住民に仕えよ。それができなければ――次はお前たちだ。」

声は冷たく響きながらも、鋭い刃のように彼らの心を切り裂いていった。

★☆ 心の底に広がる恐怖

「……逃げ場がない。」

一人の役人が絞り出すように呟く。

「俺たちを常に見ているって言ったぞ。どこで何をしていても……。」

別の者が膝をつき、その場で震えだした。

「もう終わりだ。どんな細かな不正でも、あいつにはバレる……。」

彼らの中には、処分すべき書類を握りしめた者もいた。しかし、もうそれを燃やす勇気さえ持てない。オレの魔法がそれすら見逃さないのではないかという恐怖が、彼らの行動を縛り付けていた。

★☆ 恐怖の支配

その日以来、役人たちは目に見えないオレの視線に怯えながら働くようになった。誰もが正確すぎるほど慎重に職務を遂行し、過去のような汚職は一切行われなくなった。

彼らは監視されている感覚から逃れることができない。広場に晒された首と、響き渡った声――その記憶が彼らの心に深く刻み込まれていたのだ。

「もう二度と、不正など……しない。」

そう呟く者の声には、生きる希望ではなく、ただ恐怖だけが宿っていた。