第17話 リックとミラ
★☆リックとミラ
「抱かせろ」
とリックがギルドに併設されている酒場でミラに言った。
ミラは酒を飲みながら、「何言ってんだ?」という表情をした。
「約束しただろう!お互いが無事だったら、抱かせろと」
「あー、あの約束ね・・あれは嘘だ。あきらめろ!」とミラが答えた。
「なんでだ?」
「何でもクソもあるか!なんで抱かせないといけないんだ?」
リックが一呼吸を置いて、答えた。
「俺はあの時、“死んだな”と思ったんだ。そして、後悔したんだ。俺の人生でやりたかったことを何もしていないとね・・・・だから、抱かせろ」
ミラがあきれて「女を抱きたいのなら娼館に行け!アタシよりきれいな女がいくらでもいるぞ」と答える。
「俺はお前がいいんだ!」
「アタシは商売女じゃないぜ?こう見えても騎士様なんだ。それなりの誇りってものがある」
「知っている。」
「なら、なんでアタシを抱けると思ったんだ?アタシを抱けるのは、、まあ、未来の旦那様だけだ。簡単に体を許したりしない」
「わかっている」
「アタシにはアンタの言っていることがわからないよ。だから、なんでアタシを抱けると思ったんだ!」
「だから、俺がお前の旦那様になるからだ」
二人の間に静寂が流れる。周りの冒険者たちも今までの喧騒が止み、二人を見ている。
「わからないのか?俺は今お前にプロポーズしているんだ」
「・・・・・・・わかるわけないだろう」
ミラがあきれる。そうだった、こういう男だった。リックとは長い付き合いだ。こういう男であったことは知っていたはずだ。冒険に関しては冴えわたる出来る男のリックだが、恋愛沙汰に関しては、ミラが知る限り断トツの間抜けであったのだ。ぶっちぎりの間抜けだ。
「本気か?」
「本気の本気だ!」
「なぜアタシなんだ?」
「好きだからだ」
「理由を言え」
「お前だからだ」
らちが明かない。ミラはリックを理解することをあきらめた。
「まあ、アタシもアンタとならいいかなと・・・少し・・いや、ずっと思っていたり、いなかったり、とか」
「で、抱かしてくれるのか?」
「待て!待て待て!重要なことがある。お前はアタシを抱きたいのではなく嫁にしたいのだな!」
「そうだ!さっきからそう言っているだろう!」
一欠けらも言っていない!
とミラとその周りのギャラリー(リックとミラを見守る冒険者たち)も思った。誰もが「ツッコミてー」「ぶん殴りてー」「“言っていない”と言ってやりてー」と思った。
しかし、それを指摘しない優しさを彼らは持ち合わせていた。
「ふーー、分かった。抱かせてやる・・」
「そうか、抱かせてくれるのか!」
「違うぞ!セックスするのではなく、プロポーズを受けてやるということだ!そこを勘違いするなよ!」
酒場中が盛り上がる!皆が二人を祝福する。
「なんで、抱く・・でなくて結婚したいと思ったんだ?」
「何でって?死ぬ前に結婚し、家庭を持ちたい。そう思うのが普通だろう」
ああ、また、できる男モードにもどったな。とミラは思った。
「まあ、お互いの家に挨拶に行ってだな。まあ、その前にセックスするか。旦那様」
野次馬を蹴散らしながらリックとミラは酒場を後にした。そして静かな宿屋に二人は止まった。この宿は防音が完璧であり、そういうことをするための宿屋であった。この宿屋に来るということは、そういうことが目的であるというこがばれるが、今更である。
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