第15話 冒険者たちの戦い

★☆ 冒険者たちの戦い


戦いが終わり、冒険者たちは静まり返った戦場で、なおも興奮が冷めやらぬ様子だった。

地面には無数のブラックオーガの死体が転がり、その巨大な体からは黒煙が上がっている。

だが、自分たちが立っているこの場所には――血に染まった仲間の姿が一人もいなかった。


「……なあ、リック。俺たち、本当に全員無事なんだよな?」

若い冒険者の一人が、呆然とした表情で周囲を見渡しながら言った。


「間違いないさ。死んだ奴はいない。全員が生き残った…信じられないことに」

リックは剣を片手に肩で息をしながら答えた。その声には驚きと安堵が入り混じっていた。




★☆ 苦戦の中での戦い


リックとミラのチームは、右側面の防衛に配置されていた。そこはブラックオーガが集中的に攻めてきた場所で、陣形が一時崩れかけたほどの激戦区だった。


「くそっ、なんて力だ!防壁が一撃でひびが入ったぞ」

リックは目前に迫るブラックオーガの巨体を見上げながら叫んだ。その手には冒険者として使い慣れた剣が握られているが、それでもこの敵相手では全く足りないと思わざるを得なかった。


すぐさま、そばの魔導士が防壁を修復に取り掛かる、ブラックオーガの力は驚異的だ。防壁が殴るたびに地震のような振動がおきる。



「リック、右だ!」

ミラが叫ぶと同時に、リックは振り向きざまに剣を振るい、防壁をよじ登ろうとしてきたブラックオーガの首を狙う。


「ぐおおおおっ!」

首を切りつけられた巨体が倒れる瞬間、ミラがその口の中に剣を突き刺した。


「一体倒すのにどれだけかかるんだ…」

リックが苦笑しながら息を整える。その背後では、他の冒険者たちも必死に戦っていた。


こりゃ死ぬかもな・・とリックは考える。そして、「なあ、ミラ」リックがミックに話しかけた。

「何だ?リック」とミラが答える。


「この戦いでお互いが無事だったら。抱かせろ」

リックのその一言にミラが大きく笑った。

「ガハハ、こんな時になんてことを言いだすんだ?いいぜ抱かせてやるよ」




★☆ ローラ姫の圧倒的な力


「やばい、右側面が崩れるぞ!」

一人の冒険者が叫び、全体が動揺した瞬間、空から強烈な火炎が降り注いだ。


「何だ…?!」

リックが見上げると、空からスカイドラゴンが舞い降りてくるのが見えた。その背に乗っているのは、竜騎士団長――ローラ姫だった。


「竜騎士団、第1波、突撃!」

彼女の号令とともに、スカイドラゴンたちがブラックオーガの群れに次々と炎を吐き出す。その光景はまさに神話の一場面のようだった。


「すげえ…あれがローラ姫の力なのか」

ミラが息を呑んで呟く。


「おいおい、姫様が前線で戦うなんて聞いてないぞ!」

リックは驚きながらも笑みを浮かべた。

「でも、見たかよ。あれが俺たちの味方だなんて、心強すぎるだろ」




★☆ 主君への信頼


戦場を駆け回りながらも、リックたちはもう一人の存在を忘れることはなかった。指揮台から全軍に命令を飛ばしているグランド子爵――ロードの姿だ。


「なあ、ミラ。俺たち、あいつの命令通りに動いてるだけで、ここまで無事なんだぜ」

リックが呟くと、ミラも深く頷いた。


「本当にすごいわよね。あの人、戦場の全体を見渡して、私たちを守るために動いてる。正直、こんなに信頼できる指揮官と思わなかった」


冒険者たちが生き残れたのは、ローラ姫や竜騎士団の活躍だけではなく、ロードの正確な指示と作戦があったからだ。どんな激戦区でも、無駄のない配置と支援がなされ、冒険者たちはそれを実感していた。


「普段は偉そうな貴族だと思ってたけど、あれは違う。あの人は本物だ」




★☆ 戦いの終わり


戦闘が終わった後、リックたちは陣地で集合した。全員が無事であることに驚き、安堵し、互いに労をねぎらい合う。


「なあ、リック。本当に死者がいないのか?ブラックオーガ5000体だぞ?」

若い冒険者が再び確認するように尋ねる。


「ああ、本当に全員無事だ。あの貴族様――いや、俺たちの主君がそれを成し遂げたんだ」

リックは胸を張りながら言った。


その時、ローラ姫とグランド子爵が竜騎士団とともに戦場を見渡しながら歩いてきた。リックたちは自然と姿勢を正し、頭を下げる。


「諸君、よく戦ってくれた。これも諸君らの力あっての勝利だ!」

グランド子爵の言葉に、冒険者たちは驚きの表情を浮かべる。貴族が自分たちのような庶民を労うことなど、滅多にないからだ。


「これからも諸君らの力を頼りにしている。グランド領は、諸君たち全員の家でもあるのだから」


その言葉に、リックは心の底から思った。

――俺たちは、この人についていこう。この人なら、必ず俺たちを守ってくれる。


こうして、冒険者たちにとっても、この戦いはただの勝利ではなく、新たな信頼の絆を築く場となった。

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