第14話 ブラックオーガとの戦闘

★☆ ブラックオーガとの戦闘


日の出とともに、戦いの火蓋が切られた。

スタンビートを起こしたブラックオーガの大群は、こちらの予想通りグランドシティへと直進してきていた。その数は圧巻の5000体。地響きのような咆哮と、足音が大地を揺らす。黒い巨体が波のように押し寄せる様子は、まさに絶望そのものだった。


俺たちは事前に築いた陣地で待ち構えていた。

土魔法の使い手に可能な限り高く、固い壁を作らせ、地上には様々の落とし穴などの障害物を設置していた。


中央にはグランド家の精鋭部隊が盾と槍を構え、前衛を固めている。その背後にはビルディン大公家の常備軍が控え、さらに竜騎士団が上空を飛び交いながら敵の動きを監視していた。


俺は指揮台に立ち、状況を見渡しながら全軍に命令を下す。

「全軍、持ち場を固めろ!前衛は盾を合わせ、後衛は魔法の準備を急げ!土魔法使い、ゴーレムを起動させろ」

俺の号令とともに、各自が決戦の準備を始めた。




★☆ ブラックオーガとの衝突


ブラックオーガの群れが陣地に到達した瞬間、戦闘が始まった。

「前衛、耐えろ!」


急遽作られた防壁を中心に戦士たちが、ブラックオーガに立ち向かう

前衛の兵士たちは防壁の上に立ち、よじ登ろうとするブラッグオーガを大盾で組み合わせて防壁を作り妨げる。

その前に迫るブラックオーガの巨体が、地面を震わせながら突進してきた。


「うわああっ!」


巨大な斧を振り下ろしてくるブラックオーガの攻撃に、防壁がきしむ音が響く。しかし、グランド家の精鋭たちは一歩も引かず、仲間と連携しながら耐え続けた。


「ゴーレム隊、前へ」

一斉に準備していたゴーレムが起動する。そして、ブラックオーガに殴り掛かる。

ゴーレムは攻撃力が少ないが耐久力がある。ブラックゴーレムの攻撃を防いでくれるだろう。


「後衛、魔法発射!」

俺の指示を受け、後衛の魔法使いたちが一斉に呪文を詠唱する。次の瞬間、火球や氷の矢が空を舞い、ブラックオーガの群れに降り注いだ。


オレの指揮は効能の陣地にいながら前線にも問題なく届く。

これはオレが風魔法の“遠音”という魔法を使用しているからだ。

これは距離がある相手にも声が届くように風をコントロールする魔法だ。

声は空気の振動というのはこの世界でも知られている。その空気を操作して、遠くにいる相手にも話をすることができる魔法であった。


さらに、オレの特能魔法である広範囲魔法が効果的だ。後方にいながら前線の誰よりも戦線の細部・全体を把握することができるのだ。的確なタイミングで最適な指示ができるのだ。


戦況は明らかにこちらが有利。突進するしか能がないブラックオーガに対して頑丈な防壁で身を守り、弓や魔法などの遠距離攻撃で敵を駆逐する戦略――アウトレンジ戦略が効果的に機能している。しかし、


「ぐおおおおおっ!」

幾体ものブラックオーガが炎に包まれ、苦しげな咆哮を上げる。しかし、奴らはすぐに立ち上がり、傷を負いながらも再び突撃してきた。


「さすがはCランクモンスターか…簡単には崩れないな」

俺は苦々しく呟いた。




★☆ 竜騎士団の猛攻


上空では、ローラ様率いる竜騎士団がスカイドラゴンを駆り、ブラックオーガの大群を攪乱していた。


「竜騎士団、第1波、突撃!」


ローラ様の号令で、スカイドラゴンたちが一斉に火炎を吐き出す。その業火が地上のブラックオーガを焼き払い、数十体が動きを止めた。


「さすがだな、ローラ様…」

俺はその光景を見て思わず呟いた。彼女の竜騎士団の戦力は圧倒的だった。


しかし、ブラックオーガの群れはそれでも止まらない。次々と押し寄せる巨体が、兵士たちを苦しめていた。




★☆ 崩れる陣形


「敵が右側面に集中している!追加の防衛隊を送れ!」

俺が指示を飛ばすも、敵の圧力により右側面の防壁が徐々に崩れ始めていた。


「くそっ、これ以上崩されるわけにはいかない!」

このブラックオーガに対して、防壁なくして戦うわけにはいかない。そのため、今すぐにでも救援に向かわないといけない。予備兵力で押し戻すか?ふっオレ達には勝利の女神さまが付いていただろう!


俺は『遠音』でローラ様に右側面の援護に回るように指示を出した。


その瞬間、ローラ様の声が響く。

「ロード!私にお任せください!」


ローラ様がスカイドラゴンを地上に降り立たせながら言った。

「この戦い、私たちは絶対に勝つ。ロード、あなたの作戦は正しいと信じています。だから、後は任せてください」

「ローラ様、あなたに任せましたよ!」




★☆ 逆転の攻撃


ローラ様の率いる竜騎士団は、右側面に向かい、スカイドラゴンの火炎と剣技でブラックオーガの群れを押し返していく。その姿はまるで戦場の光のようだった。


同時に、俺は残った兵力を中央と左側面に集中させ、前線を立て直した。

「全軍、再度陣形を固めろ!ここが正念場だ!」


その時、グランド家の魔法使いたちが最終準備を終えた。

「ロード様、大規模魔法の発射準備が完了しました!」

「よし、全員退避!一斉射撃だ!」


魔法使いたちが唱える呪文により、地面が震えるほどの巨大な炎の柱が立ち上がり、ブラックオーガの群れを焼き尽くしていく。


「ぐおおおおおおおっ!」

断末魔の叫びが戦場に響き渡り、ブラックオーガの大群がついに崩れ始めた。


後方からもおびただしい炎が猛威を振るっている。魔炎のブレイム兄妹が活躍しているのだろう。




★☆ 勝利の余韻


数時間の激闘の末、戦場には静寂が訪れた。

俺たちはブラックオーガ5000体を全滅させ、グランドシティを守り抜いた。


「やりましたね、ご主人様」

セバスが近づき、安堵の表情で言った。


「まだ終わりではない。負傷者の確認と、周辺の警戒を怠るな」

オレはそう言いながらも、肩の力を抜く。戦いの終わりが見えた瞬間、全身に疲労が押し寄せてきた。


その時、スカイドラゴンに乗ったローラ様が降り立った。彼女の甲冑には傷がつき、少し息を切らしていたが、表情は晴れやかだった。


「ローラ様、お疲れ様でした。あなたのお力がなければ、この勝利はなかった」

オレがそう言うと、彼女は微笑んで答えた。

「ロード、これもあなたの作戦のおかげです。あなたを信じて正解でした」


オレたちは互いの健闘を讃え合いながら、ようやく訪れた平和の余韻に浸った。この勝利は、オレたちの絆をさらに深めるものになったのだ。

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