第12話 援軍と竜騎士団

★☆ 援軍と竜騎士団


数日後、せわしない日々の末、ようやく人員が集まり始めた。しかし、戦力としてはまだ十分とは言えない。冒険者や家臣、周辺貴族の援軍を合わせても2万人程度。それに対してブラックオーガ5000体を迎え撃つには厳しい戦いになる。


グラント子爵家が本気を出せば、ブラックオーガ5000体は倒せないことはない。理由は、領内にいるC級以上の冒険者が8000人ぐらいはいるからだ。彼らを5000人集められたら、それで終了である。

しかし、集まらないのである。冒険者とはそういうものだ。冒険者と副業を暇な騎士に認めているのも、騎士の質向上の意味もあるが、いざというときの集めることができるようにするためだ。

ただ、騎士らの大半がD級までが多い。C級は王国全体、もしくは他国で名を馳せた冒険者が新たな稼ぎ場としてやってきているものが多く、グラント領に愛着なんてないからだ。



そんな中、朗報が舞い込む。

「ビルディン大公家からの援軍が到着しました!」


「よし、出迎えるぞ!」

俺は立ち上がり、外に出る。


大公家から送られてきたのは、なんと竜騎士団だった。空を舞うスカイドラゴンの雄姿が見え、俺の胸は高揚感でいっぱいになる。彼らはビルディン大公家の最強戦力。その先頭には――。


「ローラ様!」

竜騎士団の旗印のもとに降り立ったのは、大公令嬢であるローラ様本人だった。


彼女はスカイドラゴンの背から軽やかに降り立ち、儀礼に則った一礼をする。

「グランド子爵殿、竜騎士団長ローラ隊が参上しました」


その姿は気高く、まるで戦場の女神のようだ。

全身を覆う甲冑を身にまとっている。常人であれば、身動きすらできないであろう。しかし、彼女はまるで布の服を着ているかのように軽やかだ。彼女は、その圧倒的魔力もさることながら、怪力でも有名な超一級の戦士でもあるのだ。


「ローラ様、お力添えいただき感謝します。これで勝機が見えてきました」

俺は深く頭を下げた。


「それだけではありません。第2部隊5000名を援軍として派遣しました。また、グランド家第1部隊の出陣も許可されました」

ローラ様の言葉に、俺は安堵と感謝で胸がいっぱいになる。


ビルディン大公家では国境付近に常備軍を設置している。

給与を支払って軍隊を国境付近に設置しているのだ。

ただし、ビルディン大公家の直轄軍なので、オレに指揮権はない。それを援軍として、派遣してくれるというのだ。援軍というのはオレを上位者としてオレの指揮に従うということだ。

本来であれば、常備軍には将軍が在任しているので、その将軍の指揮下にオレが組み込まれるのであるが、オレがビルディン大公家の有力貴族であることと、オレがかき集めた兵力のほうが、兵力が高いことから認められたのであろう。


なお、グランド第1部隊とは2000名からなる騎士団とは別のグランド家の指揮下の常備軍である。

グランド家の指揮下なのでビルディン大公家の許可を得る必要なんてない。「主君の主君は主君でない」というこの国のルールより、グランド第1部隊にとって、ビルディン大公家は関係のない存在であるからだ。


しかし、政治的な意味が大きい。何か問題が起きた時にビルディン大公家が後ろ盾になってくれるということだからだ。ちなみに、グランド第25部隊まである。それぞれが1000人から2000人の部隊だ。他方面の防御のため、今回は運用することはできない。


さらに、セバスから朗報が届いた。

「やりました!魔炎のブレイム兄妹が参加してくれます!」


ブレイブ兄妹とはこのグランドシティが誇るA級冒険者だ。かなりの気分屋であるので、国の危機が訪れたとしても、気分が乗らないと参加してくれないと懸念していた。


「よくやった!セバス!ようやく、勝てる戦力が整った」

オレはガッツボーズをとった。その姿をみてローラ様はクスっとほほ笑んだ。

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