第11話 戦いの始まり

★☆ 戦いの始まり


俺は執務室の椅子に深く座りながら声をあげた。

「セバスを呼べ!」


扉が開き、セバスチャンが姿を現す。その表情は落ち着いていたが、俺の声に緊迫感を感じ取ったのか、眉がわずかに動く。


「ご主人様、およびでしょうか?」


「スタンビートだ。ちくしょう、今回は厄介だぞ」

オレの言葉に、セバスは険しい顔で尋ねた。

「…なんでしょうか?」


「ブラックオーガだ。それも5000体だ」


一瞬、時間が止まったような沈黙が訪れる。セバスは無言のまま立ち尽くし、驚きで顔が青ざめている。




★☆ ブラックオーガの脅威


その場面を見ていたアニーが口を挟んできた。

「ブラックオーガって、そんなに強いの?」


オレは深く息をつき、自分に言い聞かせるように説明する。

「ジャイアントボアがモンスターランクEだとすると、ブラックオーガはCランクだ。それが5000体となると…小国一つを滅ぼすには十分な戦力だ」


「…えっ?」

アニーの顔が青ざめる。「じゃあ、私たち死んじゃうの?」


「誰が死ぬか!」

オレは強い口調で言い放った。

「こういう時のためにグランド子爵家がある。俺たちは負けない」


「その通りですとも!」

セバスが力強く応じる。その目には、主人を信じる家臣としての覚悟が宿っていた。




★☆ 緊急指令


「セバス、幸いまだ時間がある。緊急事態だ。冒険者ギルドに命令して、すべての冒険者を集めろ。それから、各地に散らばっている家臣たちを召集しろ」


アニーが首を傾げる。

「散らばっている家臣って?」


「ああ、グランド家には約2万人の家臣がいる。この規模の領地としては異例だが、魔王軍に備えるためだ。しかし、平時では手持無沙汰なことが多い。だから、家臣たちは副業を認められているんだ」


「副業…?」

アニーは不思議そうに眉をひそめる。


「主に冒険者だな。グランド領の家臣は騎士でありながら冒険者でもある。戦闘能力を維持するため、また緊急時にすぐ召集できるようにな」


「なるほど…」

アニーは感心したように頷いたが、すぐに不安そうな顔に戻る。

「でも、それだけで足りるの?」


「いや、足りない。セバス、ビルディン大公家にも援軍を要請しろ」


「はっ!」

セバスは力強く答え、すぐに動き出した。



町人区のある門にて、二人の門番が話し合っている。

彼らはリックとミラである。


リックとミラらはもともとグランド家の騎士階級の人間であるが、給与が少ないので普段は冒険者をしている。騎士としての仕事はほとんどない。月に1日くらいの頻度で仕事があるのだ。それが門番である。


門番といっても門は開きっぱなしだし、人の往来を止めることもない。要するに立っているだけだ。


溢れる人員を何とか仕事を割り振ったせいで、このような勤務体系になっている。これは騎士の数を確保しなければならないグランド家の特徴であった。


リックとミラは月に1日の勤務を同じ組なのでいつも一緒に仕事している。その縁で冒険者として組むことになったのだ。


「こんどのスタンビートはブラックオーガか、、かなり、ヤバいな」


リックとミラはD級であった。C級のブラックオーガには到底歯が立たない。


「しかし、グランド子爵様からの強制徴集だからな」と、ミラが答える。


騎士の身分を返上したら、強制徴集に参加しなくていい。

騎士としての給与なんて、冒険者家業の10分の1に満たない。


しかし、騎士の身分に未練がある。

また、怪我をして、冒険者を続けられなくなった時を考えれば、返上したくない。


「やるか、、一応、騎士としてこの街を愛しているからな」

「そうだな」


そう、彼らが参加する一番の理由はこの愛する街を守るためである。

ブラッグオーガはグランドシティを滅ぼしかねない脅威であることは、優秀な冒険者である彼らにはわかっている。

だったら、自分たちが守ってやる!そう誓う二人であった。

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