1章 領地運営

第4話 領地グランドシティ

「どうだった?」


自分の館に戻ると、アニーが腕を組みながら待ち構えていた。彼女の目には、俺が持ち帰る答えを期待している様子が見て取れる。


「説得はできなかったよ。」

俺は肩をすくめて答えた。「運命を受け入れているというか…むしろ諦めている感じだったな」


「で?どうするの?」

アニーは軽く首を傾け、続けて問いかけてくる。


「とりあえず領地に戻る」

俺の言葉に、彼女は鼻を鳴らして「ふーん」と気のない返事をする。


「ローラ様が断罪されるまでにはまだ時間がある。その間に準備を進めなければならない。ただし、貴族としての仕事を怠れば領地が荒れてしまう。それでは本末転倒だ。俺の領地の力を整えるのが最優先だ」


「へえ、すごい!立派な社畜だね!」

アニーは皮肉っぽく笑った。


「うるさい」

俺は顔をしかめながら返事をしつつ、次の行動を考え始めていた。




★☆領地への帰還


俺たちが今いるのは、ビルディン大公領の都、ビルディンシティ。しかし、俺の領地は大公領の南端に位置しており、ここからかなりの距離がある。地上を移動するには時間がかかりすぎるため、俺たちは移動用ドラゴンに乗って向かうことにした。


このドラゴンはならば、領地まで1日、ゆっくりしても2日間の移動で到着する予定だ。


「ぎゃああ!怖い!!降ろしてえ!!」

背中でアニーが叫んでいるが、俺は無視する。彼女をロープでしっかり固定してあるので落ちる心配はない。高所恐怖症?そんなことは知ったことではない。俺を侮辱した罰だ。




★☆ 領地グランドシティ


「これが俺の領地だ」

ドラゴンの背から見下ろした俺の領地は、堅牢な城壁に囲まれていた。


一般的に男爵が500~10,000人、子爵10,000人から100,000人、伯爵100,000~400,000、侯爵で400,000人以上の人口がというのが基準となる。

公爵は王位継承権をもつものなので、人口は関係ない。領地のない公爵など珍しくもないというより、普通だ。例えば王太子などは領地をもっていないが王位継承権があるので公爵だ。


オレのグランド子爵領は5万人と評価されている。そうだとしたら、オレは子爵としてとし真ん中に位置規模ということになるが、その内実は違う。


俺が治める子爵領グランドは、人口50万人を誇る大規模な領地だ。先ほどアニーに説明したように、子爵の領地としては異常な規模だ。子爵の領地の人口はせいぜい10万人程度とすれば、グランドシティは特別ということになる。


その理由は明確だ。俺の領地はかつて魔王軍との最前線であり、周辺には冒険者が集まる要素が溢れている。闇ノ森と呼ばれる魔王領との国境地帯には、貴重な資源やダンジョンが点在しており、それを求めて多くの冒険者がこの地を訪れる。


さらにオレの領地は魔王軍との最前線基地でもある。

そのため、オレの領地の領都であるグランドシティは子爵とは思えないほどの規模がある。

まず、城壁がデカい。城壁の大きさならば、王都の城壁よりもはるかに大きい。その気になったら、オレのグランドシティはビルディン大公軍のみならず、王国軍全軍を簡単に収容できるだろう。


そもそも、その領地に対する基準が設けられたのは建国された400年前のことだ。当然、人口なんて大きく変わっている。オレの領地はかつては魔王軍との最前線であったため、つねに危険があった。しかし、どういうわけか、この400年間魔王軍の活動がおとなしくなったため、どんどんと人口が増えていったのだ。


オレの領地には金持ちが多い。この世界の金持ちとは、そう!冒険者だ!


冒険者はこの世界では最もメジャーな職業であった。多くの冒険者が領都グランドシティを拠点として活動する。彼らは装備やアイテムに大金を投じるし、命がけで得た報酬を酒や娯楽に惜しみなく使う。これにより、グランドシティは常に活気に満ちていた。


さらに、この地のもう一つの隠された大きな収入源が、魔族との密貿易だ。地の安全や経済を支えるためには必要な「汚れ仕事」だと割り切っている。


さらに、魔物は大人しくなったが、それは400年前と比較してのことだ。現在でも結構な頻度での魔族や魔物の襲撃を受けているため、領軍の練度もかなり高い。


この領地の力が使って、ローラ様の運命を覆す。

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