美しい信仰 2
贄と祈りを捧げよ。
さすれば、救い導き加護を与えよう。
「いっそのこと、二人でここから逃げてしまいましょうか」
少年の顔は戸惑っていた。当然の反応だ。一介の修道女の言葉がこの方に届いているだろうか。
彼は頷いていた。思わず嬉しくなってしまう。叶わないことと知りつつ愚かにも私は期待していた。彼と同じ気持ちであったらどれほど良いか。彼となら本当にできてしまうのでは無いか、と。
結局、二人で逃げることはできない。
私は微笑む。ハナから無理だと知っていたから。ここからいなくなる、それは私が生贄になるということ。それは全て決まっていたから。
着慣れた黒い修道着ではなく、用意された白い衣に着替える。
私が生贄であると知ってしまったら、あなたはどういう顔をするのでしょう。
二人きりになった大聖堂の祭壇で見つめ合う。
想いを伝える代わりとして、最後にキスをした。
聖杯を掲げ私はそれをひと息に飲み干すのであった。
一筋の涙が頬を伝う。少年は泣いていた。
静かすぎる聖堂でただ独りの天使。
既に息絶えた生贄を抱え、翼を羽ばたかせたのだった。
六枚の花びら ヒカラビロウ @hikarabirou
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