第5話:御門様、式神ってご存知?
「御門様、式神ってご存知?」
「しにがみ?・・・死神って死んだ人の魂持ってっちゃう人でしょ?」
「揚羽ちゃん・・・そうは見えねいけど・・・」
「しにがみじゃありません・・・しきがみ・・・式神です」
「それに死神って人じゃないじゃないですか」
「式神?・・・揚羽ちゃんは陰陽師さんの助手みたいな人かな?」
「助手って言いますか、陰陽師の命令で自在に動く霊的存在のことです」
和紙で出来た札に陰陽師が術をかけると陰陽師が描いた姿に形を変えるんです」
「私はもうこの姿で固定されていますから他のキャラに変わることはありません
けど・・・だからずっと揚羽のままです」
「はあ・・・なるほど・・・ってことは揚羽ちゃん和紙でできてるんですか?」
「でもちゃんとハグできるんですよね・・・エッチもできっちゃうんでしょ?」
「そこ大事なんですけど・・・」
「エッチって・・・いきなりですね」
「ああ、すいません、つい」
「エッチってこの時代の言い方でしょ?・・・営みでいいんじゃないですか?」
「いいんですってセックスでも営みでも交尾でも性交でもそんな細かいことは・・・」
「どれだってエッチすることには変わりないんですから・・・」
「まあ、よろしいですけど・・・私には関係ないことですから・・・」
「私のこの姿は言って見れば、永明様の好みの女、タイプってことです」
「あ、それなら俺もタイプです・・・揚羽ちゃんは俺のタイプなんです」
「安倍 永明さんと気が合うかも・・・つうか永明さんいいセンスしてますね
女性に関して・・・」
「は?」
「実は俺、揚羽ちゃんに別の話があって来たんです・・・」
「え?・・・平安時代に行きたいってお話は?」
「あの、平安時代に行きたいってのはただのフェイクです」
「フェイク?・・・フェイクってなんですか?」
「平安時代に行きたいってお話は?メインではないのですか?」
「はい、すいません違います」
「引かないで聞いて欲しいんですけど・・・俺、この前、揚羽ちゃんとお会いした
時から、恋の花が咲いたんです・・・今、絶賛満開中です」
「揚羽ちゃんのことが好きになっちゃったんです」
「エッチしたいんです・・・あ〜いや、そうじゃなくて、せっかく咲いた恋の花を
育てもできないまま散らせたくないんです」
「営みでしょ?」
「はい、営みです」
「って、違いますって・・・そうじゃなくて・・・よかったら、まずは俺と付き
合って欲しいと思って?」
「あの、そう言うお願いはダメでしょうか?」
「・・・メインな話ってそれですか?」
「私、式神ですよ・・・人間の男子となんかお付き合いできませんよ」
「でも大学中の男どもが揚羽ちゃんに群がって来てるって話じゃないですか?」
「そんなあわよくば的やつらと違って俺は真剣です」
「めっちゃドキドキして自分の気持ちを告白しようかやめようか散々悩んだんです」
「この切実な気持ち分かりますか?」
「分かりません・・・」
「私に言い寄ってくる殿方はどなたであろうとみなさんお断りしてるんです」
「え〜そんなあ」
「そこを百歩譲ってなんとか俺に振り向いてくれませんか?・・・人助けだと
思って」
「人助けって・・・私、ボランティア活動はしてませんけど・・・」
「でも、俺の世界に揚羽さちゃんがいないなんてももう考えられないんです」
「もう揚羽ちゃんがいないと俺は生きていけません」
「どうか僕の彼女になってください、一生のお願いです!!」
「まあ、大袈裟な殿方・・・今までだって一生のお願いって何度も言って来た
んでしょ?」
「たった今、一度っきりですって・・・信じてよ揚羽ちゃん」
「だとしても、そう言うことは私一人では決められませんの」
「永明様にお伺いを立ててみませんと・・・」
「ぜひ、お伺い立ててください」
「それが・・・今、永明様は・・・」
「すいません御門様、実を言いますと私は今、御門様と逢瀬を重ねてる場合では
ないのです」
「逢瀬って・・・デートってことでしょ?・・・まだ重ねてないじゃないですか?」
「これからでしょ?・・・それに俺より大事なことってなんですか?」
つづく。
※普通ならば、平安時代の人はセックスのことを「逢う」って表現するらしい
ですが揚羽が「逢う」なんて言ってもピンと来ません。
性交とか交わりとか、まぐわいって言い方も下品ですし、だからここは普通に営み
にしておきました。
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