第3話:揚羽ちゃんはバーじゃなくて古井戸にいる。

俺は揚羽あげはちゃんのことを知ってる人がいるか大学中聞いて回った。


噂によると彼女はめちゃモテるらしくて大学中の男子が履き捨てるくらい寄って

くるらしい。

でもこれまで揚羽ちゃんを落とした男子は誰ひとりいないって話だった。


揚羽ちゃんは美人さんで、独特な魅力を持っている。


まあ、告るほうも美人に告るわな・・・相手が美人ならフられた時の言い訳も

なにかと都合がいいからな。

ブスにフラれると、男のプライドが許さない・・・立ち直れないだろ?

情けない話だけど男というのは、スケベと見栄で生きている。

俺もまあ、ご多分に漏れずだけどな。


だから余計、揚羽ちゃんが狙われるって方程式。


俺は揚羽ちゃんとはじめて遭遇した衝撃からしばらく経って、ふたたび

心霊研究会の部室を訪ねてみようと思った。


モテまくりの揚羽ちゃんが俺なんか鼻にもかけないと思ったけど、でも諦め

きれない。

だから、ふたつほど下手くそな俳句を書いて、俳句の話がしたいと揚羽ちゃんに

会いに行くことにした。


で、作った俳句・・・。


「みかんの木 ゆらゆら止まる 揚羽ちゃん」


「男から 告白される 揚羽ちゃん」


万平はとりあえず五・七・五文字が並んでたらなんでもいいって思った。

適当に書いて揚羽からなんらかのアドバイスをしてもらえばよかったのだ。


で、俺はドキドキしながら心霊研究会の部室を訪ねた。

でも、部屋にはまた男子がふたりほどいただけで肝心の揚羽ちゃんがいない

じゃないか。


ひとりの男子部員に揚羽ちゃんの行方を聞いてみたら、彼女はこの大学の

敷地の隅っこにある古井戸を調べてに行ってるって話だった。


古井戸ってあれか?・・・・まさかのあの井戸・・・まじ幽霊が出てきそうな

不気味な井戸。


その古井戸のことは俺も知っている。

昔、番町皿屋敷って話があるけど、この大学の敷地の隅っこにある古井戸も、

昔その話まんまの出来事があった井戸だって聞いたことがある。

その横には小さい祠があって井戸で亡くなった女を弔ってるって話だ。


だから壊すことも移動することもできないまま放置してあるんだって。

祟りがあったら怖いからね。


あ〜あ・・・よりによって・・・俺はホラーとか幽霊とかお化けとかって

苦手なんだよな。

揚羽ちゃんには会いたいし・・・だけどよく考えたら彼女と話すのは学内より

部室より誰も寄り付かない井戸のほうが絶対いい・・・だから今がチャンスなんだ。


そこで俺は訳あり井戸のある場所に向かった。


「あ、いたいた」


揚羽ちゃんはこっちにお尻を向けて座っていた。

すぐに彼女だって分かる・・・着物を着た女なんて学内で揚羽ちゃんだけ

だし・・・。


着物でしゃがんでるから丸いお尻の形がはっきり分かる。

大きさといい形といい申し分ないお尻・・・もうたまんない。

裸になったらそれはもう立派で素敵なお尻にお目にかかれるんだろうな。


なことを妄想しつつ彼女を驚かすといけないと思って俺は大股で歩いて、

わざと咳払いなんかしながら彼女に近づいて彼女が俺に気づくようにした。

案の定、彼女は俺に気がついて振り向くとおもむろに立ち上がった。


「どなた?・・・・」


「あ、あのすいません俺です」


「あ〜この間の変な方?」

「またいらしたんですか?・・・私になにかご用?」


「あのですね・・・見て欲しいモノがあるんですけど・・・」


「見欲しい?・・・私に?」


彼女はいぶかしげに俺を見た。


つづく。


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