【2】 双極性障害について
【牧口】 さて、今⽇は、林先⽣には、「双極性障害と仕事、及びそのサポート」というテーマでお話しいただこうと思いますが、リスナーのみなさんによく理解していただくために、まずは、そもそも「双極性障害」って何だ? というところから、お話しいただこうかと思います。
それでは、簡単に、ご病気のご説明からお願いできますか?
【林】 かしこまりました。
「双極性障害」とは、気分の異常に⾼い「躁状態」と、異常に低い「うつ状態」を交互に繰り返す病気で、古い⾔い⽅では、「躁うつ病」と⾔います。
また、双極性障害にはⅠ型とⅡ型がありまして、Ⅰ型は「躁」と「うつ」の波が同じくらい、激しく現れるもので、Ⅱ型は「躁状態」はあまりひどくはなく、その代わりに、「うつ状態」がⅠ型以上に激しく現れるものです。
【牧口】 なるほど。
林先⽣はⅠ型Ⅱ型どちらですか?
【林】 僕はおそらくⅡ型だと思われます。ですので、今⽇お話しさせていただく際の、「双極性障害」は、原則として、Ⅱ型を前提とさせていただきます。
Ⅰ型は、症状の現れ⽅や回復のしかたなどが、Ⅱ型とは全く別のものになりますし、仕事への影響なども当然違ってきます。それに、僕⾃⾝がⅠ型を経験していませんので、深くは語れないですしね。
【牧口】 なるほど。それで、Ⅱ型である林先⽣の場合の「躁状態」「うつ状態」は、それぞれどんな感じなんですか?
【林】 まず、「躁状態」のときですが、Ⅱ型ですので、そんなにひどいものではなく、社会に対して問題を起こしたりはしません。⼝数が多くなったり、お⾦遣いが荒くなったりと、個⼈的な症状にとどまります。
また、その際に、苦しみというものもほとんどなく、むしろ、何もかもがうまくいっているような感じがして、気持ちがよく快感で、現在や未来にも⼤きな希望が持てます。
【牧口】 なるほど。それでは、林先⽣の場合は、「躁状態」⾃体は、それほど悩ましいものではないのですか?
【林】 そうですね。問題となるのは、⻑い「躁状態」の後には、かなりの確率で⼤きな「うつ状態」を伴って、⼤きな苦しみとなることなんです。
【牧口】 なるほど。では、その「うつ状態」の時の、症状や苦しみは、どんな感じなんですか?
【林】 僕の場合、Ⅱ型ゆえに「うつ状態」は、かなり深いものであることが多いです。症状としては、気分の激しい落ち込みがあり、⾏動も鈍ります。
また、なにもかもがうまくいかない気がして、絶望に満ちた気持ちになってしまいます。最悪の時には、⾃殺願望につながることもありまして、昔は⾃殺未遂(みすい)を実際に⾏ったこともありますね。
【牧口】 なるほど。それは苦しいでしょうねぇ。そんな「うつ状態」からは、どうやって抜け出せるんですか?
【林】 特に効果的な⽅法はありません。嵐が過ぎ去るのをただ待つ、という感じです。⼀晩寝たら治る程度のものも多いのですが、中には数カ⽉に渡って続いてしまうこともあります。
そんな時は、できるだけ友達と会って、⾃分ひとりになる時間を短くして、気を紛(まぎ)らすという⽅法を取ることが多いですね。
【牧口】 なるほど。わかりました。ありがとうございます。
それで、Ⅱ型双極性障害の⼈、以下、単に「双極性障害の⼈」とさせていただきますが、その⼈たちが仕事をする際に影響してくる、症状の特性みたいなのはありますか?
【林】 そうですね。なんといっても「体調の不安定」さ、でしょうね。特に、Ⅱ型障害の場合、「うつ状態」の⽅が激しく、また期間も⻑いことが多いですので、普通の勤務スタイルに適応するのは、なかなか難しいのです。
【牧口】 なるほど。その不安定さは、何か起こる原因があるのですか?
【林】 原因がない場合が多い、というのが正直なところです。
まず、そもそもの話なんですが、双極性障害の⼈には、「普通」という状態がなく、常に「躁状態」か「うつ状態」かのどちらかになっているのです。程度の違いはありますけどね。そして、その2つの状態の交代は、ある時突然やってくるのが普通なんです。
【牧口】 なるほど。それでは、基本的に予防のしようがないんですね。⼤変ですねぇ。
原因がある場合もあるのですか?
【林】 そうですね。仕事においては、実は原因があることが多いんです。なぜかというと、Ⅱ型双極性障害の⼈は、うつの状態が多いわけですが、社会に適応するためには、「うつ状態」のままでは難しいんですね。そこで、意識的にか無意識的にか、軽い「躁状態」を保って、仕事に臨むことになります。
すべての職場がそうとは⾔えませんが、今の⽇本社会って、ちゃんときちんとしっかり、みんなと仲良く、みたいなのを求められるじゃないですか。Ⅱ型双極性障害の⼈がそれに適応するのって、実は⼤変なんですよ。「躁状態」をキープしないとできませんから。
【牧口】 なるほど。そうなりますと、仕事中に無理やり「躁状態」に上げてしまっていますから、その反動で、⼤きな「うつ状態」に陥(おちい)ってしまうと?
【林】 そうなんです。つまり、そのことによって、本来以上に、「躁」と「うつ」の波が激しくなってしまうんですね。「うつ状態」もより深くなってしまいます。
【牧口】 なるほど。今のお話だと、双極性障害の⼈は、その症状の不安定さから、そもそも、通常の社会適応が難しいということなんですね。よくわかりました。ありがとうございます。
では、以上のことを踏まえまして、本題の⽅へ⼊っていきましょうか。
【林】 はい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます