第3話 ゴールデンウィークの予定
新学期が始まってから数週間。慌ただしさがようやく落ち着き始めた頃、ゴールデンウィークの足音が近づいてきていた。
長期休暇といえば、家でゲーム三昧か録り溜めたアニメを一気見するのが俺の恒例行事。
だけど──今年はどうやら、そんな平和な休みは訪れなさそうだ。
「玲くん。」
「しのっち。」
放課後の教室。帰り支度をしていた俺に、両側から声がかかった。
右からは、軽音部の天使こと霧谷詩織。左からは、バスケ部のエース、桐谷優奈。
「玲くん、ゴールデンウィーク空いてる?」
「しのっちは絶対暇だよね?」
──いや、なんでそんな断言されるんだよ。
「えっと……まあ、特に予定はないけど。」
「なら決まりだね!玲くん、私と遊びに行こ!」
「ダメ。玲くんは私と出かけるの。」
また2人に巻き込まれるのかと思いつつ僕は話を聞いた。
でもどうして2人は同じタイミングで話しかけるのだろうか……。
「玲くん、どっちと行くか決めて。」
「しのっち!今回は逃げるのダメだよ!」
「いや、どっちかに決めるとかじゃなくて──」
「選んで。」
「玲くんが選ぶんだよ。」
2人が息を合わせて言う。同時に近づいてくる距離。ふわっと香る甘い匂い。いい匂いだ。
「……な、なんで二人ともそんな必死なんだよ。」
思わず後ずさると、霧谷さんが俺の袖をちょんっと引いた。
「だって……玲くんと一緒に過ごしたいんだもん。」
うわ、反則技きた。
上目遣いで見つめられて、なんとなく顔が熱くなる。
「玲くん、私と出かけてくれるよね?」
急にしのっち呼びではなくくん呼びだとキュンときかけたがなんとか精神を保った。
今度は桐谷さんがぐっと俺の肩に手を置く。
近い。身長差があるせいで、完全に包み込まれるような感覚だ。
「わたしも玲くんと一緒にいたいの。」
すると後ろから顔を耳に近づけてきた。肩を流れる髪がサラサラしていて綺麗だった。
「いいでしょ。玲くんのしたいことなんでもしていいよ。」
そう耳元で囁かれた。もはや理性が保たないぐらいだ。
「じゃあさ、霧谷ちゃん勝負しようよ。」
桐谷さんがピシッと指を立てた。
「は?」
僕は無意識に言ってしまった。
「どっちが玲くんにふさわしいか、デートプラン対決だ!」
「……桐谷さん。それはいいね。玲くんには楽しいデートを選んでもらおう!」
「……いや、そういうの俺の意見とか……。」
「玲くんのためだよ。」
「ね、しのっち。」
──俺の休日が、完全に二人の手の中で決まろうとしていた。まあ、別にいいのだけれど。
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