真っ暗な天井

ゆきやこんこん

天井

―――今日も寝る前に天井を見上げる。


何も見えないほど真っ暗な天井は目を凝らしても、目を広げて見ても何も見えない。


だけれども、この真っ暗な天井は様々な景色を見せてくれる。


特に決まったものであったり、特別なものを見せてくれるわけではないけど、“晴れているわけでもないけど何故か心地が良い青空”とか、“何も変わらない安心する家のリビング”、“いつも見ているごちゃっとしてるけど自分だけはわかる机の上”とか様々ないつも見ているような普遍的な景色を。


そんな景色を眺めながら何も考えないでいると、どんどん景色が変化していく。


色が混じって、色が減って、音がついて、音が消えて、人が出てきて、人がいなくなって、全てが混じって、全てが消えて、心なしか明るくなって、また暗くなって、ぐるぐると。


そのまま、変化に身を任せてぐるぐるぐるぐる流されて、漂って。


嬉しいことも、ムカつくことも、悲しいことも、楽しいことも全部流れに任せて漂って、ぐるぐると色んな感情すら全てが飲み込まれる。


そんな心地がいい空間で漂いながら変化を感じていると、景色が元に戻っていく。


出てきた人が帰って行って、混ざった色が元に戻って、消えた部分も再生して、音が無くなって。


全てが元に戻ったら、何か明るく感じる。


見せてくれていた景色が天井に戻って ――



――朝になる。



また今日が始まる。


そのまま起き上がって、“何も感じない青空”に、“何も感じない家のリビング”、“何も感じない机の上”などさまざまなな何も変わらない景色を眺めていく。


その再放送より単調な景色を眺めたら、また夜になる。


おやすみなさいを言って、

布団に入ってそのまま―――

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真っ暗な天井 ゆきやこんこん @mameeeeeeeee

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