柊宰商女のアドバイス

拾十六楷

序、琰の国


「今日の品物、ここに置いとくね!」

「いつも悪いねぇ」


 この街は眠らない。陽が上がれば人々は働き、月が上がれば酒を飲み交わす。先代皇帝の時代から始まった遊牧民族との戦争による特需によって急激に経済が伸び、今や世界の貿易の中心を担うほどの都市へと変貌した。水上貿易を主とし、他の国家との交流も盛んに行われている。

 商売が回り始めると、自ずと頭角を表す商家が誕生する。杉伍繕唐さんごぜんとうと言われる四大商家が今現在宮廷に物を献上できる、商家として最高の権利を皇帝より下賜されていた。


「お前を今日から女中へ繰り上げとする」

「ありがとうございます!」


 これは、下積みを乗り越え昇格した十六歳の"賢き女"、またの名を、琰の国で起こる事件へ勝手に巻き込まれてゆく"哀れな女"が主人公の物語である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る