能力者狩り?

 僕は溜め息をつく。きょう何回目かも忘れた、溜め息を。


「どう証明すれば良いんだか……。ともかく、濱家の〝反転〟でこうなった。ちなみに濱家も金髪美少女になっている」

『はぁ?』


 僕はセルフィーカメラを起動し、電話越しで彼女に自分たちの姿を見せる。


『誰と誰?』

「よー、宮崎。おれだよ、おれ」

『オレオレ詐欺に手を染めたわけね』

「そうじゃねェよ!!」ゲラゲラ笑う。

『でも、不思議とアンタらがアンタらだと感じる。赤の他人がなりすましてるとも思えない』

「そりゃあ、おれらは本人だからな! なあ、タイラー!」

「うん、まあ」

『で、アンタらこれからどうするつもり? 濱家はどうにでもなるかもしれないけど、勝又は両親もいるでしょ?』

「家族でしか知り得ないことを言えば、まあ納得するでしょ。14歳まで息子だったのが、きょうから娘になったしお得! とか言いかねない親たちだし」

『呑気ねえ……』

「こういう態度じゃないと、自分を見失いそうで怖いのさ」

『まあ良いや。私が訊きたいのはそこじゃない』

「なに?」

『能力者狩り、って知ってる?』

「あァ? あのアホどもか?」濱家が口を挟む。


 能力者だらけのこの街は、すなわち持っている者と持たざる者を作ってしまう。それに、この街は〝カテゴリー〟という評定まで行っている。全市民に、だ。となれば、落ちこぼれが郎党を組んで持っている者を襲撃することも珍しくない。


『そう。濱家、アンタなら良く知ってるでしょ? 中学生だから舐められて、良く絡まれてるはずだし』

「まーな」

『ソイツらがアンタを潰すつもりらしいよ』

「なんでそんなこと知ってンだよ?」

『学校にいる不良の先輩が話し合ってたから』

「あァ? 悪いけど、カテゴリー6は災害級の実力を持つんだぞ? おれも詳しくは知らんけど」

『あのアホどもにも、なにかプランがあるんじゃない? 〝身体改造〟とか』

「なるほど。濱家の〝反射〟はまだ完成していないから、身体を改造して捻り潰そうってわけだ」

『そう。勝又があんなのに絡まれたら、ただじゃ済まないって忠告したかっただけ。濱家はなんだかんだ勝つと思うけど』

「そりゃ、おれは強ェからな」

『ともかく、勝又を大事に思うなら、今すぐ散り散りになって。アイツらだって馬鹿じゃない。関係ない勝又を襲うつもりはないはずだから』

「分かった、ありがとう。宮崎──」


 そのとき、

 ヒュン、となにかが耳を掠めた。スマホの画面が割れ、僕は戦慄しながら後ろを振り返る。


「なんだ。もうちょっと近くないと当たんねェモンだな」


 リボルバー拳銃を持った、中学の先輩が高台に立っていた。

 僕の喉は砂漠のごとく枯渇し、何度も唾を呑み込む。中学生が拳銃? スマホの割れ方から、それが本物、あるいは限りなく本物に近いエアガンだというのは分かる。

 分かるからこそ、僕は冷や汗を垂らすしかない。

 そんな中、


「当たるわけねェだろ。だいたい、当たってたら先輩死んでたぜ?」


 金髪の少女濱家渚は、指を指して先輩を愚弄する。

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